マーケティング戦略のお手伝いをしている際に、必ず競合について、「御社にとっての競合はどこですか?」という質問をさせていただいています。大抵の場合は、自社の製品やサービスと同じような製品を提供している企業さんが返ってきます。もちろん、それは狭義の競合として間違いないのですが、実際のビジネスとしてはそこだけ見ていると足元をすくわれてしまいます。

マーケティング近視眼

マーケティングを学んだことがある人は「マーケティング近視眼(Marketing myopia)」というセオドア・レビットの学説を知っているかもしれません。マーケティング近視眼とは、自社の役割を狭小に定義してしまい、真の顧客ニーズを見失ってしまうことです。特に、長く同じような製品やサービスを提供している競合と競っていると、この傾向は顕著に出てきます。有名な例としては、ハリウッドの映画業界が「映画を作る」業界と自らを認識し続けた結果、真の顧客ニーズであったエンターテイメントを提供するテレビ業界やゲーム業界などの他業界に顧客を奪われ、業界全体が崩壊の危機に陥ったというストーリーがあります。

このように、競合を自社と同じような製品やサービスを提供する会社と捉えて、自社役割を小さく捉えてしまうと、同じ顧客のニーズを満たすような製品が現れた場合に、一気に市場を奪われてしまうことが発生します。これはある意味、イノベーションのジレンマと共通する話でもありますが、厄介なのは、破壊的イノベーションでなく既存の製品やサービスでもちょっとした技術の変化でとって変わられることもあります。この例としてはスーパーのレジ袋があります。スーパーのレジ袋はいかに単価を下げるか、製造コストを下げるかという競争をしてきました。ところが、プラごみ削減の流れのさなか、レジ袋の有料化が後押しした形で、従来から合ったエコバックに一気にとって変わられつつあります。

真の競合とは

さて、狭義の競合ではなく、本来の競合を見極めるにはどうすればよいのか。それには顧客の真のニーズを見極める必要があります。真のニーズを見極めるには、そもそもその製品は何をするために存在するのかという視点に立ち返って考えることで、ある程度見極めることができます。その上で、同じ真のニーズを満たすことのできる製品やサービスを持つ企業が本来の競合になります。

ちなみに、マーケティングフレームワークの5 Forcesでは、自社の製品やサービスと同じカテゴリーの製品としての競合とは別に、同じニーズを満たす別の製品である「代替品」という項目があり、忘れずに検討するようになっています。

さらに、もっと広い意味での競合も存在します。真のニーズと他のニーズのどちらにお金を使うかです。流石にここまでマーケティングで考えることは稀ですが、自社の製品やサービスが満たすニーズを持つ顧客の、限りあるお金を奪い合う相手が一番広い意味での競合になります。実際に営業の現場ではこの競合と争うことは珍しくありません。とはいえ、実態のわからない相手との競争は事前に想定できないので、現場現場で対応するしかありません。

ということで、マーケティングでは狭義の競合だけではなく、真の競合を意識して考える必要があるというお話でした。