新規事業おじさんのつぶやき Vol.206 新事業開発を担うのは「出島」か「現業部門」か
以下の記事が目に留まりました。
新事業開発を担うのは「出島」か「現業部門」か SCSKの選択は?
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00438/00013/
長年にわたって、議論されている命題であり、人と組織が存在する限り、議論が終わることのない命題だと思います。
ですが、私たち実務家はその時その時の答を出して、進んで行かなくてはなりません。
そんな意識を持って、SCSK社の事例を見ていきましょう。
>私が所属していたサービスイノベーション推進部は、プログラムの運営も行っていましたが、出島的な組織として、イノワンで出てきたアイデアの事業化支援をしていました。そうした業務を合併後も続け、計7年ほど携わってきました。振り返ると、アイデア出しは今でも会社の文化になっているなと感じています。
>ただ残念ながら、そこから事業化できたものは今のところ1件だけです。事業化というのはなかなかうまくいくものではなく、個人が発想したアイデアから事業性を見いだしていくことは、結構難しいことだと実感しています。
これは本当にそうですね。アイデア出しはできても、事業化までたどり着くのは本当に大変だということを物語っていますね。
>そこで17年に全社主導のイノワンはやめ、18年度から「SIP(SCSK Innovation Proposal)」制度を立ち上げました。これは、仕組み自体は全社で決めていますが、運営を含めて、どういうテーマで、どのように募集するのかは各事業部門で考えてやっていきましょう、というものです。
>主体は各事業部門で、かなり自由に取り組んでいます。コンセプトとしては、既存事業と地続きでやっていくのが特徴だと思います。出島ではなく、組織の中でやろうということで、実現性を重視しています。
SIPの特徴は事業部門自身が自身のアセットを活かして、そこから地続きの事業開発を行うというものですね。
>また20年10月から、SIPの仕組みとかつてのイノワンが持っていた要素をさらにグレードアップした、「みらい創造プログラム」が始まっています。既存事業の枠組みにとらわれないで新しいSCSKのビジネスをつくろうということで、イノワンがどちらかというとお祭り的な感じだったのに対して、みらい創造プログラムは実現性を伴わせる形で、会社主導で行っています。
そして、会社(コーポレート)主導での取り組みも併せて行っている。
時間をかけて、積み重ねを進められた結果であることがよくわかると共に、素晴らしいことだと思います。
>事業立ち上げについては、先ほど出島では事業化できたものが1件しかなかったと言いました。事業化がうまくいかなかった理由は、アイデアが微妙だったということもありましたが、アイデアとしてはよくても、「ではどこの事業部門がオーナーになってくれますか」というところでつまずくことが多かったからです。
>悔しかったのは、事業として旅立ちを迎えて、事業計画も立てて事業部門に引き渡したのですが、結局、早期の売り上げを求められたため、うまくいかずに閉じてしまった例があったことです。出島から持っていくと、事業立ち上げは結構難しいと思ったことが、私が事業本部に異動したくなった理由の一つです。
こちらで語られていることは「あるある」です。各社ごとに解は異なるものなのですが、SCSK社はどうされたのでしょうか。
>では事業部門から出てきたアイデアを、どうやって引っ張り上げ、押し上げれば事業化へと進んでいくのか。ここはやはり専門の人間のサポートが必要になります。どういう段取りで、どのように物事を整理していかなければいけないのかといったことを、何回も習熟した部隊が付いて伴走していく。それによって地に足の着いた事業として、ゴールまでたどり着けると思っています。今、私どものところでは、そうした組み合わせがうまくできるような取り組みを行っているところです。
私には、このくだりが刺さりました。
アイデアを事業化するプロセスの専門家というのがいるのです。
そういう人にサポートを受けるということの意義がなかなか理解されていないと感じることが多いのですが、残念なことです。
それゆえ、私自身は「アイデアを事業化するプロセスの専門家」の1人として、「新規事業おじさん」というセルフブランディングを行い、発信しているものであります。
>そうした案件も、まだ大きなビジネスにはなっていません。しかし、こういったマインドセットを準備しておく必要があると思っています。1日の業務の後に、「こんなことに困っているんだが、何かいい方法はないか」といったことがお客様との話の中で出てきます。そんなとき、「いや、それは契約の範囲外なので」と片付けられないシーンもあります。
「いや、それは契約の範囲外なので」と片付ける人がどれだけ多いことか。
それゆえ、片付けないことが新たな機会につながるのです。
(本稿は2023年に投稿したものの再掲です。)

