英単語を覚えるとき、数をこなすべきか、それとも質を上げるべきかという話はよく聞く話ですが、これはどちらが優れているというわけでもなく、学習のステージや目的などによって最適解が変わってくる類いの話です。ここでは『英単語の覚え方』の後編として、英単語の数をこなして覚えていく場合のやり方、またどういうときにそのやり方が適切であると考えられるかについて解説します。

語彙を覚えるときに意識するべきこととして、『能動的語彙』と『受動的語彙』という考え方があることをまずおさえておくと良いでしょう。

能動的語彙とは、「作文や日常会話で、自分から発信に使える語彙」のことです。漢字で喩えるなら、『自分で書ける漢字』のイメージです。一方受動的語彙とは、「読んだり聞いたりしたら分かるが、自分から発信するときには頭によぎらない、または使えない語彙」のことを指します。漢字で言うなら、『読めるけど書けない漢字』のイメージが近いでしょう。自分が増やしたいのが、能動的語彙なのか受動的語彙なのか、まずはこれをはっきりさせておきましょう。

基本的には、人は能動的語彙よりも受動的語彙の方が多いとされています。自分で使いこなせる語彙は、自分が見聞きして理解できる語彙の数よりも少ないというわけです。つまり語彙習得は、『受動的語彙』の段階から『能動的語彙』の段階という、ふたつの段階を持っているとも言えます。

特に学習初期は、受動的語彙が重要になります。まずはテキストに書かれている例文が分からないと勉強が進みませんし、特に検定試験などを受ける場合でも、点数のほとんどはリーディングやボキャブラリーの理解度に依存しているため、受動的語彙が重要であるからです。

では、受動的語彙を増やすにはどうすれば良いでしょうか。これは単純で、「10個の英単語をしっかり覚えよう」と考えて英単語帳を見たりするのではなく、「100個の英単語を見て、そのうちの10でも15でも頭に残れば上等」くらいで取り組んでみるのが良いでしょう。

このときには、とりあえず英単語を見たときに理解できるようにしておけばOKなので、ひとまず日本語と対応させて覚えても大丈夫です。ただ、もしもある程度勉強していて慣れているのであれば、英単語の説明を英語で読んで理解する(英英辞書を引く、英英で説明している単語帳を買ってみる)のも良いでしょう。

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やがて、受動的語彙だけでは対応しきれないような問題や、単語のイメージやコロケーションなどが重要になってくる段階がやってきます。そのときには能動的語彙を増やすつもりで、前編で解説したように英単語のイメージを膨らませて覚えるようにすると良いでしょう。