英語学習に限らず、何かを学ぶとき、『他にはない独自メソッドで圧倒的に効率UP!』のような文句が見られることは珍しくありません。では、そういった独自メソッドは、本当に効果的なのでしょうか。ここでは、そういったことについて考えてみましょう。

もちろん、僕自身、すべてのそうした『独自メソッド』をこの身で経験したことがあるわけではないので、以下のことがすべてに対して言えるというわけではありません。しかし、『独自メソッド』という言葉を使う以上、そこには"独自"ならではの共通点があるはずです。そういった点に注目すると、見えてくることもあるはずです。ここでは、独自メソッドという言葉の定義について、『少なくともその学習方法を提供する人物が、"他ではやっていない方法である"と自認して宣伝している内容』であると考えましょう。

ここで考えるべきは、『独自のメソッド』ということは、そのメソッドを体験したことのある人は非常に少ないであろうということです。この『体験したことがある人が少ない』というところに、『だからあなたもぜひこのチャンスをお見逃しなく』と畳みかけることでそれをむしろ価値としている宣伝文句が多いのですが、翻って考えてみると、それはそのメソッドの体験サンプル数が非常に少ないということでもあります。

あるメソッドに対してサンプル数が少ないということは、そのメソッドの有効性を図ることが難しいということです。極端な話、自分なりのやり方で英語を勉強して、それで自分なりに納得のできる英語力を身につけることができたとき、その"自分なりのやり方"を他の人に共有しないままにしておけば、そのメソッドのサンプル数は1、しかし成功率で言えば100%(1人中1人が成功)ということになります。サンプル数が少ないということは、メソッドが有効であるかどうかの信憑性を揺るがすことでもあるのです。

また、どの程度の成長ができれば『このメソッドのおかげで結果が出た』と言えるかも、人によって様々です。例えばTOEICが300点から350点になったことで『このメソッドで結果が出た!』と感じる人がいるかもしれない一方で、『50点アップしたくらいではこのメソッドの効果かは分からない、むしろちょっと試験日に運が良かっただけかも』と考える人もいるかもしれません。こうしたことを考えていくと、『独自メソッド』と呼ばれるものが仮に存在したとしても、そのメソッドには『再現性が低い』ということができます。

一方、再現性が比較的高いメソッドというのは、これまで多くの人が挑戦してきて、(中には失敗した人がいても)比率としては成功している人の方が多いというようなメソッドのことです。しかしそうしたメソッドは、基本的にはどこかで聞いたことのあるような面白味のない、「まあ、結局そういうことだよね」と感じやすいメソッドであるため、中々注意を引きません。とは言え結局のところ、そういった地道な勉強が最も"再現性が高い"ということはおよそ間違いないのです。

英語学種コーチングやメンタリングという仕事があることの意味はここにあると僕は考えています。つまり、特定のメソッドやサンプル数の少ないメソッドを画一的に全員に当てはめるのではなく、個々の学習状況などを通じて、その人にとっての最適解を考えていくことが重要になるのではないかと思うのです。