ある証券会社の「つみたてNISA」解説
もと原稿について
ある証券会社の「つみたてNISA」の解説です。
「口座開設可能期間が令和24年(2042年)まで5年間延長になります。令和5年(2023年)までに「つみたてNISA」を始めれば、年間40万円を上限に最長で非課税期間20年間の積立投資ができます」
とありますが、皆さんは「2023年までに始めなければ、つみたてNISAを利用できない」と読み取れないでしょうか。この文章は、期限が2042年までなので、逆算して2023年開始、としていると考えられます。
つみたてNISAの仕組み
つみたてNISAの仕組み(2024年に改正)を整理しておくと、
① 今年、投資した分(上限40万円)は20年間非課税となり、終了したら、NISA口座以外の口座に払い出されるか、売却します。
② 投資できるのは2042年まで、2043年はNISAを利用できません。
③ 期限ぎりぎりの2042年に投資をしても、2061年まで非課税で運用できます。
ただ、2042年しか投資できないため、非課税投資枠は最大で40万円しか活用できません。
④ 今年始めても、2042年までNISAを利用できます。
※投資可能期間には、20年間という制限はありません。
私が執筆するなら
上記の仕組みを踏まえて、私が執筆するなら、
「「つみたてNISA」は、年間40万円を上限に最長で非課税期間20年間の積立投資ができます」(または「令和5年(2023年)までに「つみたてNISA」を始めれば、最大800万円の非課税枠をフルに活用できます」)とシンプルにします。文字数が増えても問題ない場合は、④の解説もするかもしれませんが、④を解説し始めると、混乱する可能性があるため、基本的には触れないでしょう。
盲点
④について、補足しておきます。
つみたてNISAは2018年に始まっており、2024年に5年延長され、2042年まで利用できます。つまり、人によっては、2018年~2042年利用できるため、投資可能期間は20年を超えます。これが、前述の「投資可能期間には、20年間という制限はありません。」という意味です。
つみたてNISAの説明でよく、「非課税投資枠最大800万円」と記載されています。たとえば、2018年から利用している人が毎年40万円上限まで利用すると、2037年に20年後の非課税枠800万円に到達します。2038年も引き続き投資できますが、2018年に投資した分は非課税投資枠から外れ、新たに2038年分の枠が追加されるため、800万円を超えることはなく、「最大800万円」となります。
さいごに
ちなみに、この文章に違和感を覚えてから、ネットで検索し、金融庁に指定されたNISAコールセンターに2度確認しております。
この証券会社の文章もCFPが執筆していますが、知識があっても、文章や言い回しを間違えると、伝わる情報が変わってきます。たまに一文の言い回しを決めるのに、何時間もかかることがあります。
相手に正しく伝えるにはどのような表現がよいか、知識があることよりも文章力が重要だとわかる一例を紹介しました。