「なんとなく分かっている」を、行番号まで絞り込む方法
復習というと、「もう一回同じところをやる」だと思われがちです。
そこを疑ってみたいです。復習は、やり直す作業ではありません。どこが分かっていないかを1点に決める作業です。
同じところをもう一周しても、分かっている部分にも同じ時間がかかります。分かっていない箇所が全体の1割なら、9割は確認作業に消えます。それでも「やった感」は残るので、達成感と進捗がズレていきます。
「読んで分かる」と「何も見ずに書ける」は別物です ── これは以前にも書きました。今日はその先の話です。別物だと分かったあと、じゃあ自分はどこが書けないのか。 ここを1点に絞り込む手順を書きます。
「なんとなく分かっていない気がする」で止まっていると、何を復習すればいいか決められません。逆に「この行が書けなかった」まで絞り込めれば、次にやることが決まります。
📌 以前、うまく動かなくて作り直したくなったときは「消す前に一度立ち止まってください」と書きました。今日は逆で、動いているものを、バックアップを取ったうえでわざと消す話です。目的が違います(あちらは事故回避、こちらは意図的なテスト)。
やること
一度動いたコードを退避してから消して、同じものをもう一度書きます。
それだけです。そして、手が止まった行が、まだ理解していない場所の候補です。何行目で止まったかだけメモしておいてください。あとで見返す起点になります。
読み返しでは、この行はなかなか特定できません。読んでいる間はどこもスラスラ通過してしまうので、「全体的になんとなく」以上に解像度が上がりにくいからです。書こうとして初めて、止まる場所が1点に定まります。
手順(欲張らないのがコツです)
いきなり全部消すのはおすすめしません。範囲を絞ってください。
消すのは「1つの機能」だけ。
アプリ全体ではなく、「入力フォームの部分だけ」「一覧を表示する部分だけ」のように、1画面より小さい単位にします。
元のコードは別の場所に退避しておく。
消すといっても、フォルダごとコピーを取ってからで構いません。戻せない状態でやると、怖くて集中できません。
書けなければ、以前書いた15分ルール(詰まったら15分を目安に切り上げる)と同じ目安でやめる。
粘るのが目的ではありません。目的は書けない場所を見つけることなので、場所さえ分かればその時点で役目は終わっています。
特定できたあと、何をするか
ここからが本題です。「書けなかった」で終わらせると、ただ落ち込んで終わります。
止まった箇所を、この3つのどれかに仕分けてください。うまく仕分けられないときは、後述のAIの使い方でも判定できます。
a. そもそも何を使えばいいか出てこなかった
道具の名前を知らない状態です。ここは調べれば埋まります(後述のとおり、名前だけAIに聞くのがいちばん手軽です)。
b. 使うものは分かったが、書き方が出てこなかった
学習中はここが多いと感じます。名前が出ているなら、公式ドキュメントの該当ページを開けば埋まることが多いです。覚え直すというより、参照先を自分の中に持つイメージです。
c. 書けたが、なぜそう書くのか説明できなかった
これがいちばん厄介で、いちばん価値があります。動くものは書けているので放置されがちですが、応用が効かないときに原因になっていることがあります。ここだけは、腰を据えて調べる価値があります。
(AIに直してもらった直後に「なぜ直ったか」を聞く話は以前書きました。こちらはあとから自分で選び直す話です。)
a・b は比較的すぐ埋まります。c を見つけるためにこの作業をやっている、くらいに思ってもらっていいです。
AIの使い方は、答えを最後に回す
止まった箇所をAIに聞くとき、いきなり完成形を見ないほうが a/b/c の切り分けができます。以前書いた「段階的に聞く」やり方を、この場面に当てはめる形です。
Next.js で入力フォームを作っています。
見ずに書こうとしたら、入力値を保持する部分で手が止まりました。
いきなり完成コードは見せないでください。
まず「何を使えばいいか」の名前だけ教えてください。
それでも書けなければ、次に骨組みだけ見せてください。
名前を聞いて書けたなら a(欠けていたのは名前だけ)、名前を聞いても書けなければ b(名前は分かっているのに書き方が出てこない)、書けたけれど理由が言えなければ c。この順で自分で判定できます。完成コードを一度に見てしまうと、この境目が消えます。
頻度
毎日やる必要はありません。むしろ、やりすぎると前に進む時間が削られます。
新しいことを学んだ日ではなく、何日か空けてから、1機能だけ。時間を置いたほうが、テストとして機能しやすくなります(これは実測ではなく、私の感覚です)。
そして、学習中に詰まったときはすぐAIに聞いていいです。これは復習・確認の場面に限った話で、前に進んでいる最中の話ではありません。
書けなかった箇所が見つかった時点で、成功しています
落ち込む必要はまったくないです。
見つからないまま先に進んで、あとで大きく詰まるほうがずっと痛いです。c が1つ見つかったら、その日の復習は成功くらいに考えてください。
そして実務でも、コードを一字一句覚えている人はほとんどいないと思います。覚えているのは「何を使えばこれができるか」という当たりのつけ方のほうです。この作業で鍛えられるのは、まさにそこです。
AIと学ぶときに、これはより効きます
AIに書いてもらったコードは、自分で書いたものよりさらに「見れば分かる」に寄りやすいです。読めば筋が通っているので、c に当たる箇所が見えないまま通り過ぎます。
だからこそ、AIが出したものを一度消して、自分で書けるか試すという手順が要ります。
ここで身につくのは、コードの書き方だけではありません。AIに任せた部分のうち、どこまでが自分の手の内に入っているのかを、自分で測れるようになります。任せる範囲を自分で決められるかどうかは、これから先どんな仕事でも効いてくる感覚だと思っています。
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