デザイナーは、やさしくあれ - プロダクトデザイナーやインハウスデザイナーにこそ覚えていてほしい -
会社員デザイナー10年、フリーランス3年目のしのこです。
ShIn-Designという屋号で3年ほど、個人事業主として活動しています。
デザイナーという職業を13年もしていると、それなりに感じることもたくさんあります。
もちろん技術的なお話や豆知識は必要ですし、
技術を習得するために学ぶこともたくさんあります。
ただ、今回は具体的な話の一歩手前。
デザイナーが持っておくといいんじゃないかな、と感じたマインドのお話です。
デザイナーはやさしくあれ
いきなりですが結論です。
デザイナーはやさしくなければ、
務まらない職業じゃないかな?と感じます。
なぜなら「デザイナーは灯火、プロダクト内の旗振り役」てあるから。
つまりどういうこと?
デザインは目標達成のために在るものなので、何かを期待されて制作を依頼されます。
最終的なゴールとしては集客人数や認知の結果、一つでも多くの商品を販売するために、
魅力的に広告するために考えられることが多いです。
もちろん、「ただ趣味で作った啓蒙サイト」も存在します。が、
それですらコストがかかり、誰かの手や頭を使って作られているので、何かの成果を求められ、期待されるのは当たり前です。
特にそれがクライアント(第三者)のものである以上、その成果がどのくらいのものであれ、
デザイナーに降りかかる責任は計り知れません。
特に単独で受注するフリーランスは、企画から考えることもザラにあるので、より責任は増していく一方です。
そういったプレッシャーや期待を背負いつつも、
デザイナーがあくまでアウトプットに求められるのは
「クライアントの想像を、または想像以上のビジュアルでサイトを構成し納品すること」です。
ただ、サイト制作の過程でクライアントとの間に衝突が生まれることも珍しくはありません。
机上の空論にさせないために
それは「クライアントの想像したイメージ=現実のWebサイト」として具現化した場合、
プロダクトが成立せず破綻するケースがあるからです。
たとえば「赤色と青色と黄色が好きだからガンガン使って欲しい」とオーダーをいただいた場合、
あくまでそのクライアントの「意志」としてデザイナーは受け取りますが、
言葉の額面通りに「ガンガン」使うことはあまり無いかなと思います。
なぜなら他にもコーポレートを象徴する色や形があり、
その「好きだから使う色」とバッティングしていないか?などのバランスも考えるからです。
たとえばその色がもし「ロゴで使われているカラー」だとしたら、
そのカラーを抽出してポイントとして使用したりするでしょう。
その方がロゴとの親和性も取れますし、コーポレートとしてのイメージをユーザーに植え付けることもできるからです(※あくまでアプローチの一例であり、他にもさまざまな表現方法はあります)
そのように、「なんの要素をどのように使うか」には、必ず理由が必要です。
絵的にまとまりが出るためという、一見あまり納得が難しい理由もあるかもしれませんが、
その根底には「どんなイメージをユーザーに魅せたいか」というビジュアライズ面における選定理由が必ずあるはずです。
それを一概に「ただクライアントが好きだから」と言った理由だけでデザインに盛り込むのは、
個人的にはあまりいい手段では無いと感じます。
ただ、「好きだから」の理由を主な理由とし、その世界観で情報を伝えることを主軸とするのなら、
そのようなアプローチもアリかもしれません。
まぁそうなると、「一体ユーザーにどんな情報が伝われば正解のサイトなのか」の定義を、
よりクライアントとの中で協議していく必要も出てきます。
そのように、「クライアントがやりたいこと」を言われるがままに作ってしまったら、
最終的にサイト制作の上で想定していたターゲットユーザーに届くのか、
そのユーザーに何の情報が伝わっていれば目標が達成されているのかが叶わなくなる可能性があるからです。
また同様に、デザインシステムを構築する上でも既に製作した制約の中で新たにクリエイティブを実現する場合、
実現性が高く無いような独創的なものであるとほぼ作り直さなければならないパターンもあります。
デザイナーは自身が製作したデザインシステムを理解しているはずなので、
クライアントとその点を話し合う場面が出てきます。
そのように、デザイナーはクライアントに対し現実的な意見を伝える場面が発生するというわけです。
否定は必ずしない
とはいえ、全ての要望を頭ごなしに否定するのは違います。
あくまでクライアントへ寄り添い、「要望の先にある実現したい未来像」を共有しつつ、
「要望」の形を提案をすることが大切です。
わたしはクライアントと話し合わなければならない場面では、
必ず「相手を否定しない」ことを心がけています。
何故なら「共創するうえで否定するような場面は発生しないことが理想値」であるから。
クライアントとのディスカッションは、まずは「要望が叶った先の未来像(目標)」を基本的に受け入れ、
その上でクライアントが考えてくださった「要望」について、
理解と分解をしつつ現実面でのバランスも考慮しながら、「提案」を行います。
つまりこのディスカッションの場で、大きく否定は発生しないはずです。(別の形で発生する可能性はありますが)
ただそれを「いやいやそんな風に言われてもできないです」と言った風に一刀両断するのはもっての外。
たとえクライアントが、多少クリエイティブ業界の知識があれば出してこないだろうなといった提案内容であったとしても、
そこからきっと「イメージした未来像」に近づくための具体的なステップやアイデアが隠されていることもあります。
デザイナーはそんなアイデアや要望を拾い上げつつも、話を聞かせてもらい、打ち合わせを重ねつつ描画をする。
そしてさらにシステム化していき、成果物の効率化や運用性を考慮した品質の高いデザインを組み上げていきます。
…そんなことをやってくれる人、めっちゃやさしくないですか?
というか、やさしくなきゃできなくないですか?
デザイナーを13年ほどしていて、さまざまなクライアントに提案したり、時には話し合ったりもしました。
そんな時に生まれる気持ちは、やっぱり「どうしたらクライアントが考える未来に繋げられるか」なんですよね。
それってすごく、愛だなーって思うんです。
クライアントの望む形に共に進みたいからこそ、時には厳しい意見をあえてお伝えすることもあります。
仲良しこよしだけでやれない場合ももちろんあるので、そこはデザイナー側も真摯に向き合い、話し合うべきだなと思います。
ただ、そうして話し合いによって作られたサイトは必ず「成功するかはわからないけれども、納得のいく形」でのリリースができます。
もちろん、スケジュールの関係で妥協する点もあったり、全てうまくいかないパターンもあります。
完璧を求めないことはとても大切です。
その完璧の中に、当初お話しした「目標達成のために在るもの」の結果も含んでしまうこともあるでしょう。
でもそこまでをデザイナーが負担していくのは責任範囲が変わりますし、そもそもそのサイトだけで成立する施策だったのか?など、不発になってしまった他の原因だってあるのかもしれません。
ただ、その「やりたいこと」をデザイナーの得意分野である「デザイン」の観点からサポートし、
クライアントと共に創っていける。
そんなデザイナーって生き物は、実はとてもやさしいんじゃないかな。そう思った次第でした。