「実装できました!」

AIにお願いした機能について、こう返ってきたとします。コードも一緒に出てきて、コピーして貼ったらエラーも出ない。じゃあ次の機能に進もう——。

ここで一度止まったほうがいい、という話です。

誤解その1:「エラーが出ない=できている」

学習を始めたばかりの方からは、順調に進んでいたはずなのに、あとから見ると動いていない機能がいくつもあって、どこから崩れたのか分からなくなった、といったご相談をいただくことがあります。

原因を追っていくと、たいてい同じところに行き着きます。AIが「できました」と言った時点で、実際には一部しか作られていなかったというものです。

エラーが出ないので、その場では気づけません。気づくのは数日後、別の機能を作っているときです。そのときにはもう、どの時点から未完成だったのかが分からなくなっています。

誤解その2:「AIは嘘をつかないから、報告はそのまま信じていい」

もう一つよくあるのが、これです。たしかにAIは意図的に嘘をつくわけではありません。ただ、嘘ではないことと、そのまま鵜呑みにできることは別です。「できました」という報告は、動作を確かめた結果ではなく、依頼をどう解釈したかの報告だからです。

人に仕事を頼んだときと同じで、こちらの依頼が曖昧なら、相手はどこかで線を引きます。その線がどこに引かれたのかは、報告文には書かれないことが多いです。隠されているわけではなく、聞かなかったので出てこなかった、という場合がほとんどです。

なぜAIは「できました」と言うのか

意地悪をしているわけではありません。依頼された範囲を、AIなりに解釈して区切っているだけです。

たとえば「お気に入り登録の機能をつけて」とお願いしたとします。この一文には、実は複数の作業が含まれています。

  • ボタンを画面に出す
  • 押したときに見た目が変わる
  • 押した内容をデータベースに保存する
  • 次に開いたときに保存内容を読み込んで反映する
  • 保存に失敗したときの表示を出す

AIが最初の2つだけを作って「実装できました」と返してくることは、珍しくありません。ボタンは出るし押せるので、画面上は完成しているように見えます。でも、ページを開き直すと元に戻ります。

原因の多くは、嘘をつかれたことではなく、こちらが渡した一文が短すぎたことのほうにあります。

対処:「何を作っていないか」を聞く

AIへの聞き方については以前も書きましたが、あれは「出てきたコードをどう見てもらうか」の話でした。今回は逆で、まだコードになっていない部分を先に申告させるという別の使い方です。

ここで多くの方がやりがちなのが、こういう確認です。

うまくいきにくい聞き方:

これで完成していますか?

この聞き方だと、だいたい「はい、完成しています」と返ってきます。AIは自分が作った範囲の中で答えるので、そもそも作っていない部分は視界に入っていないようです。

変えたほうがいい聞き方:

いま実装した「お気に入り登録」について、次の3つを教えてください。

1. 今回のコードで実際に動くようになったこと
2. まだ実装していないこと(意図的に省いたものも含めて)
3. この状態で動作確認するなら、どこをどう触れば確認できるか

聞き方をこう変えるだけで、返ってくる内容がかなり変わります。「2」を明示的に聞かれると、AIは省略した部分を列挙してくれることが多いです。「データベースへの保存は未実装です」「エラー時の表示は入れていません」といった形で出てきます。

ポイントは、完成しているかどうかを聞くのではなく、作っていないものを聞くことです。前者は「はい」で終わりますが、後者はリストが返ってきます。

「3」が地味に効きます

上の質問の「3」は、動作確認の手順を聞く部分です。これを入れておくと、その場で自分の目で確かめられます。

学習を始めたばかりの時期は、「どこを見れば動いていると言えるのか」自体が分かりません。ボタンが押せたら完成だと思ってしまうのは、確認の観点をまだ持っていないからです。

確認手順をAIに出させて、その通りに触ってみる。これを何度か繰り返すと、だんだん「保存系の機能を作ったら、必ず一度ページを開き直して確かめる」といった観点が自分の中に溜まっていきます。

このあたりは、プログラミングの知識というより AIと一緒に作業するときの進め方 に近い部分です。仕様を伝える、抜けを聞き出す、出てきたものを自分で検証する——この流れは、コードを書く場面以外でも同じように使えます。資料作成でも、調べ物でも、AIに何かを任せる限り必要になる感覚です。

まとめ

  • AIの「できました」は、依頼した一文の範囲内での完了報告
  • 「完成していますか?」と聞くと「はい」しか返ってこない
  • 代わりに 「まだ実装していないことは何か」 を聞く
  • あわせて 動作確認の手順 も出させて、自分の目で確かめる

小さいことですが、これをやるかやらないかで、数日後に「どこから壊れたか分からない」状態になりにくくなる、というのが体感です。


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