「もっとポジティブになりなよ」

「いつも考えすぎだよね」

20歳を過ぎたあたりから、周りにそんなふうに言われることが多くなった。

世間一般では、そう言われると傷ついたり落ち込んだりするのかもしれない。けれど、僕のスタンスはちょっと違った。

傷つくどころか、むしろ「いや、言うほど僕がネガティブか? 周りが何も考えずに楽観的すぎるだけだろ」と、言われることに対して全く納得がいっていなかった。

何事にも、良い面もあれば悪い面もある。だからこそ、最悪のパターンを想定して慎重に動くのは、僕にとってはただの「当たり前のリスクヘッジ」だったからだ。

僕は「考えすぎ」「ネガティブ」という便利な言葉で片付けられてしまうことに、ずっと違和感を抱えて生きてきた。

そして30代になった今、あの時の僕の違和感は「完全に正しかった」と確信している。

  1. 「ただの思考停止」と「本質的なポジティブ」の決定的な違い
    世間には、2種類の「ポジティブな人」がいると思う。

1つ目は、悪い意味で楽観的な人。

彼らは「なんとかなるよ!」と口では言うけれど、実は単に「悪い面を想像する力がない(思考停止している)」だけだったりする。だから、何の対策もせず無防備に飛び込んで、当然のように失敗し、そのまま立ち直れなくなってしまう。

2つ目は、本質的にポジティブな人。

一見、いつも前向きで軽やかに見えるけれど、彼らは決して何も考えていないわけではない。むしろ、最悪のシナリオやリスクをこれでもかと想定した上で、「じゃあ、どうやって良い面を形にするか?」を選択しているのだ。

心理学では、この思考パターンを「ディフェンシブ・ペシミズム(防衛的悲観主義)」と呼ぶ。

アメリカの心理学者ジュリー・ノレムの研究によると、あらかじめ最悪の事態を具体的にシミュレーションしておく人(防衛的悲観主義者)は、いざトラブルが起きても「想定内のことが起きただけ」と捉えられるため、パニックにならずに即座にリカバリーできる。結果として、最初からただ楽観的だった人よりも、はるかに高い成果を出すことが科学的に実証されている。

あの有名な「東洋のバフェット」とも呼ばれた投資家・邱永漢(きゅう えいはん)も、こんな言葉を残している。

「最悪の事態を想定し、最善を尽くす。これが、あらゆる勝負に勝つための大原則である」

つまり、リスクを徹底的に考えることは、ネガティブでも何でもない。むしろ、「打たれ強い本質的なポジティブ」を作るための、必須のプロセスなのだ。

  1. かつての僕が「ネガティブ」と誤解されていた理由
    かくいう僕も、かつては周りから「ネガティブだ」と言われることが多く、そのたびに強い違和感を抱えていた一人だった。

フリーランスになって自己理解を深める中で、僕はなぜ自分が誤解されていたのか、その理由がようやく分かった。

当時の僕は、最悪のシナリオである「裏の残念な結果」ばかりを口に出し、そればかりを発信してしまっていたのだ。

リスクを想定することは間違っていない。けれど、口から出る言葉が「ダメかもしれない」「こういうリスクがある」ばかりだと、周りからは単に「後ろ向きな人(ネガティブ)」にしか見えなくなってしまう。

では、僕たちはこれから、頭の中をどう整理していけばいいのだろうか?

答えは、ものすごくシンプルだ。

「『残念な結果(リスク)』が存在することを大前提として受け入れた上で、口に出す言葉と行動は、常に『ポジティブな結果』を目指すこと」

これだけだ。 物事には常に2択(良い面と悪い面)がある。悪い面の存在を無視する(お気楽な楽観主義になる)必要は一切ない。 「最悪、こういう残念な結果になる可能性もあるよね」と、頭の片隅で冷静にリスクを握りしめておく。その上で、「でも、僕は良い方の結果を目指して動くよ」と、行動の矢印だけを常にポジティブな方へ向けておく。

このバランスこそが、本当のポジティブなのだ。

  1. この「本質的なポジティブ」が、僕と受講生を救ってくれた
    ネガティブな部分(リスク)を決して否定せず、深く分析する。その上で、「明るい未来(良い面)」を目指して全力で頑張る。

この思考プロセスを手に入れてから、僕のコーチ、コンサルとしての活動は劇的に変わった。

受講生が新しい挑戦をするとき、僕は「大丈夫だよ、なんとかなる!」なんて無責任な言葉は言わない。「こういうリスクや、こういう失敗のパターンが考えられます。その上で、こうやって成功ルートを目指しましょう」と、両面を提示する。

だからこそ、受講生は不安に襲われることなく、安心して行動を起こし、次々と成果を出していくことができる。

これは、ただ明るい未来だけを語る「楽観主義者」には、絶対に真似できないことだと自負している。

  1. あなたの「考えすぎる脳みそ」は、最強のセンサーだ
    もしあなたが今、周りから「考えすぎ」と言われてモヤモヤしているなら、これからはその言葉をまともに受け取る必要はない。

最悪の事態を想定できるその想像力は、ビジネスにおいても、これからの人生においても、自分の身を守り、確実に成果を出すための「最強のリスクマネジメント能力」だ。

ただの思考停止した楽観主義に流されて、無防備に失敗して潰れてしまうくらいなら、最悪をすべて想定した上で、淡々と「良い方の結果」を目指して手を打てる、強いあなたでいよう。

僕だって、今でも繊細だし、考えすぎるクセは変わらない。周りの楽観主義に「それ、本当に大丈夫?」と内心ツッコミを入れるスタンスも、この先もずっとそのままだ。

でも、それでいい。その慎重さがあるからこそ、僕は確実に、何度でも自分の足で立ち上がって進むことができるし、僕を信じて頼ってくれる受講生を安全に目的地まで連れていくことができる。

あなたのその「考えすぎる脳みそ」は、欠点なんかじゃない。これから荒波を乗り越えていくための、あなただけの特別な才能です。