「今の若手は、何を考えているのか分からない」——マネジメントをする立場の方から、こうした声をよく聞きます。

25年以上、PM・エンジニアとして最大20名の社員と70名のパートナーを率いてきた中で、若手社員の育成にも数多く携わってきました。同時に、26年間スポーツチームのコーチとして、大学生から社会人まで、異なる世代を指導してきた経験もあります。この記事では、20年前の若手と今の若手で何が変わったのかを整理したうえで、今の若手のモチベーションを引き出すために実践していることをお伝えします。

20年前の若手と、今の若手の違い

「頑張れば報われる」が、前提として共有されていた時代

20年ほど前は、「夢のために働きたい」「プライドの持てる仕事をしたい」という理想を、若手自身が比較的素直に語れる時代でした。長時間の努力や苦労も、いずれ報われるものとして受け入れられやすい空気があり、上司が厳しく引っ張るスタイルのマネジメントも、一定の納得感を持って受け止められていました。

今の若手は、「社会や人の役に立ちたい」という意識が強まっている

近年の調査では、就職において「人のためになる仕事をしたい」「社会に貢献したい」と考える割合が、20年前と比べて明確に増加している一方、「自分の夢のために働きたい」「プライドの持てる仕事をしたい」という回答は減少傾向にあります。景気の変動や災害、感染症拡大といった社会的な出来事を経験してきた世代だからこそ、"個人の成功"よりも"誰かの役に立っている実感"を大切にする傾向が強まっていると言われています。

「人前で褒められたくない」「静かに働きたい」という感覚

今の若手の特徴として、目立つことや、人前で評価されることを必ずしも好まない傾向も指摘されています。かつては「みんなの前で表彰する」ことがモチベーションになった場面でも、今は本人にとって負担になるケースがあります。一方で、成長実感や達成感、承認といった"精神的な報酬"そのものは強く求めており、褒め方・伝え方の工夫がより重要になっています。

「会社に依存しない」という意識の広がり

副業や個人でのスキル習得が身近になったことで、「会社に依存せず、自分の力でキャリアを築きたい」という意識を持つ若手も増えています。20年前は、会社の中でどう評価されるかがモチベーションの中心でしたが、今は会社の外でも通用する成長実感を重視する傾向が強まっていると言えます。

この違いを踏まえて、実践していること

1. 「何のためにやるか」を、こちらから先に伝える

今の若手は、作業の意味や、それが誰の役に立つのかを重視する傾向があります。タスクを渡すときは、やり方の説明だけでなく、「このタスクが、最終的に誰の・どんな課題解決につながるのか」を先に伝えるようにしています。意味づけがないまま作業だけを渡すと、モチベーションが上がりにくいと感じています。

2. 褒め方を、公開の場か個別かで使い分ける

成果を評価するとき、全員の前で大々的に褒めることが、必ずしも本人にとって嬉しいとは限りません。本人の反応を見ながら、「1on1などの個別の場で、具体的に何が良かったかを伝える」やり方を基本にし、公の場での評価は、本人の希望や性格を踏まえて判断するようにしています。

3. 短いスパンでの成長実感を、意識的に作る

かつては「いずれ報われる」という長期的な視点が受け入れられやすかった一方、今は短いスパンでの成長実感が重視される傾向があります。大きな目標だけを示すのではなく、「今週はここまでできるようになった」という小さな達成を、こまめに言語化して伝えるようにしています。

4. 「会社の外でも通用する力がついている」ことを伝える

会社への依存を前提としないという価値観を踏まえ、今取り組んでいる仕事が、その人自身の市場価値やキャリアにどうつながるかを、意識的に伝えるようにしています。「この経験は、他の環境でも通用する力になる」と伝えることで、会社のためというより、本人のキャリアのためという文脈で、前向きに取り組んでもらいやすくなります。

5. 一方的な価値観の押し付けをしない

自分が若手だった頃の「これくらい当然」という感覚を、そのまま今の若手に当てはめないよう意識しています。異なる年代のスポーツチームを指導してきた経験からも、世代や背景が違えば、響く伝え方がまったく異なることを実感してきました。価値観を押し付けるのではなく、本人が何を大切にしているのかを聞いたうえで、伝え方を調整することを心がけています。

変わらないものも、確かにある

一方で、20年前も今も変わらないと感じることもあります。それは、「自分の成長を実感できているかどうか」が、モチベーションの根幹にあるという点です。時代によって、成長実感の得方や、評価されたいと感じる場面は変わっても、「昨日より少しでもできるようになった」という実感そのものへの欲求は、世代を問わず共通しています。

表面的な価値観の違いに気を取られすぎず、この根っこの部分を丁寧に育てていくという姿勢は、時代が変わっても変える必要がないと感じています。

まとめ

若手社員のモチベーションを引き出すには、時代による価値観の変化を理解したうえで、接し方を調整することが大切です。

  • 20年前は「頑張れば報われる」という前提が共有されやすく、今は「社会や人の役に立ちたい」という意識が強まっている
  • 人前での評価より、個別の丁寧なフィードバックが重視される傾向にある
  • 短いスパンでの成長実感や、会社の外でも通用する力の実感が、モチベーションにつながりやすい
  • 一方で、「成長を実感したい」という根本的な欲求は、世代を問わず変わらない

若手の価値観は時代とともに変化していきますが、その変化を「今どきの若者は」と切り捨てるのではなく、なぜそう変わってきたのかの背景まで理解しようとする姿勢が、モチベーションを引き出すマネジメントの出発点になると感じています。