はじめに

私が職業としてシステムエンジニアになったのは、27歳の時でした。
年齢からも分かる通り中途採用で、IT業界ではかなり遅いスタートになります。

とはいえ、私の世代では珍しく、かなりのプログラミングの経験があり、『実務経験がないだけ』という状態ではありました。
それでも、転職活動は思っていたよりも厳しく、色々と難儀しました。

そんな経験を振り返り、今からエンジニアを目指す方々に、私が感じた点をお伝えしておきたいと思います。
心構えのような項目ですが、3つに絞ってみましたので、少しでも参考になれば幸いです。

1.論理的な思考力

これは、転職以前に、業界が向いているかどうかという問題です。
コンピュータというのは、完全に論理で動くモノです。
ですので、それを最前線で扱うエンジニアも、当然、論理的に考えられることが求められます。

論理的に考えるとは、『○○だから△△になる』、『××が起きたのは◇◇が原因だ』のように、因果関係で物事を捉えることです。
『なんかよくわかんないけど、ちゃんとなったからいいや』という考えは、どこかの段階で通用しなくなります。
逆に、『「ちゃんと」って、何がどうなったら「ちゃんと」なんだよ』と考えられる人は、エンジニアに向いていると言えます。

また、中途採用の場合は、ある程度の即戦力としても期待されての採用になるはずです。
ですので、業界全体の適性とも言える『論理的な思考力』が見えないと、中々採用してもらえないでしょう。

もしこれを読んでいる方の中で、そういうのが苦手という方がいましたら、別の業界への転職をお勧めします。
「エンジニア」と名の付く職は、基本的に『論理的な思考力』が必要です。
苦手な業界で生きるより、得意な業界で生きた方が、オフタイムも充実すると思います。

2.客観的な評価

かつて、私はゲームのシナリオライターになりたいという夢を持っていました。
自分にはシナリオを書く才能がある、そう思っていました。
しかし、運よく拾っていただいたゲーム会社で、「ホンモノ」のシナリオライターを目の当たりにします。
自分がいかに井の中の蛙だったかを思い知らされました。

その経験があったため、私はシステムエンジニアに転職する際、自分の能力がどの程度なのか、客観的な評価が重要だと考えていました。
その方法としてたどり着いたのが、情報処理技術者試験の資格取得です。
情報処理技術者試験の資格は国家資格ですから、試験の合否は、かなり客観的な証明になります。
もちろん、相応の難易度はありますが、根拠もなく『私にはエンジニアの才能がある!』と思いこまなくて済みます。

また、裏を返せば、自分がどれほど無知であるかを知ることもできます。
参考書を読んで、まず理解できない。
知らない言葉や用語、概念ばっかり。
今でこそ高度試験をコンプリートしてますが、最初はUSBもろくに説明できないような、全くの無知からスタートしています。

そんなわけで、自分の能力を客観的に評価してもらうことには、2つの意味があります。
ひとつは、自分の能力を証明するため
そしてもうひとつは、身の程を知るため
『転職したはいいが、周りについていけない』ということのないよう、自分の力量を正しく知ることが重要です。

3.協調性

私が転職して一番衝撃的だったこと。
それは、プログラムのソースコードが商用とは思えないほど『スパゲッティ』だったことです。
『おいおい、これが現場のソースコードかよ』
当時そう思ったのを覚えています。

そのソースコードは、今思い返しても確実に『スパゲッティ』です。
様々な処理が複雑に絡み合い、構造の理解を妨げる『失敗のお手本のようなソースコード』です。

ですが、部分部分を見ると、プログラミングの初心者でも分かるような、簡単なソースコードになっていました。
システムというのは、しっかりとしたものであれば、10年以上使われます。
当然、バージョンアップなども行われますが、同じエンジニアが担当するとは限りません
さらに、人手が足らない場合など、スキルが十分でない技術者がプログラムを書くこともあります。

ですので、上級者しか分からないようなソースコードというのは、大きなプロジェクトほど愚策です。
上級者がいなくなっても、人並みの人材だけで管理できるようなソースコードこそが、現場で求められるソースコードです。
『ベストな状態を知っておくことは重要だが、時にはスパゲッティに合わせる必要もある』
エンジニアという「仕事」は、自分一人でソースコードを組むのとは、わけが違うということです。

?.隠し要素

ということで、事前に準備できるものとして、3つ挙げてみました。
少々手厳しい物言いもしていますが、私自身が勘違いで大きな挫折を味わったので、同じ目に遭ってほしくないと思い、あえて書かせていただきました。

ただ実は、この3つ以外に、まだ一番大事な要素が残っています。
それは、「ご縁」です。

『結婚か?』とツッコまれそうですが、実際、会社との「ご縁」もあります。
私が転職した会社も、採用の決め手は、『ネットワークに明るい技術者を探しているところへ、ネットワークスペシャリストが殴りこんできた』というものです。
配属されたときも、人事の部長に『山本君、ネットワークスペシャリストだから』と、メンバーの前で紹介されました。(圧がヤバイ)

また、社長が元エンジニアで、情報処理技術者試験に一定の価値を感じてもらえていたという点もあります。
ここは各企業の方針などもあるので一概には言えませんが、私が価値があると思っているものに、同じように価値を感じてもらえる会社に巡り合えたのは、やはり「ご縁」としか言いようがないと思います。

おわりに

以上が、エンジニアを目指す方に知っておいていただきたい基礎知識です。
冒頭でも述べた通り、心構えに近いものですが、実際に私が転職して感じたことですので、参考になる方もいるのではないかと思い、ナレッジとして残させていただきました。
皆さまも、よい「ご縁」に巡り合えますよう、心からお祈りしております。