20名の社員・70名のパートナーを率いて分かった、部下育成で本当に大事なこと
プレイングマネージャーとして、最大20名の社員と70名のパートナーを統括してきました。技術者としてコードを書きながら、同時に人を育てる立場にも立ち続けてきた中で、「教えているつもりなのに、なかなか育たない」という悩みに何度もぶつかってきました。
この記事では、規模も背景も異なるメンバーを育成してきた経験から見えてきた、部下育成で本当に大事にすべきことをお伝えします。エンジニアチームのリーダー・マネージャー、これから部下を持つ方に役立つ内容です。
「教える」だけでは、人は育たない
キャリアの初期、後輩指導というと「自分の知っていることを、丁寧に説明する」ことだと思っていました。しかし、規模の大きいチームを率いるようになってから気づいたのは、丁寧に説明すればするほど、逆に部下が自分で考えなくなっていくという逆説でした。
答えを先に渡してしまうと、部下は「聞けば教えてもらえる」という状態に慣れてしまい、自分で試行錯誤する経験を積む機会を失います。育成とは、知識を渡すことではなく、本人が自分で考え、判断できる状態を作ることだと捉え直してから、育成のやり方が大きく変わりました。
育成でつまずきやすい3つのパターン
1. 全員に同じ教え方をしてしまう
20名を超えるメンバーを見ていると、同じ説明の仕方をしても、すんなり理解する人もいれば、まったく響かない人もいます。経験値、性格、これまでのキャリア——背景が違えば、刺さる伝え方も違います。「自分が教わってきたやり方」をそのまま全員に当てはめようとすると、必ずどこかで無理が出てきます。
2. 「できるようになるまで」の距離感を見誤る
育成する側は、自分がすでにできるようになっているため、「これくらいはすぐできるだろう」と距離感を見誤りがちです。本人にとってはまだ何段も階段が残っている状態なのに、いきなり最終形を求めてしまうと、本人は「自分にはできない」と感じて自信を失ってしまいます。
3. フィードバックが「結果」にしか向かない
うまくいかなかったときに、結果だけを指摘するフィードバックは、本人にとって「何がダメだったか」は分かっても、「次どうすればいいか」までは分かりません。結果ではなく、判断のプロセスに目を向けたフィードバックが、次につながる育成には欠かせません。
実践しているメソッド
1. 任せる範囲を、段階的に広げる
いきなり大きな裁量を渡すのではなく、影響範囲の小さいタスクから、判断まで含めて任せる経験を積ませます。うまくいけば任せる範囲を広げ、うまくいかなければ一段手前に戻す。この調整を繰り返しながら、本人が安心して挑戦できる裁量の広さを見極めていきます。
2. 「なぜそう判断したか」を必ず聞く
作業の結果だけでなく、「なぜその方法を選んだのか」を本人の言葉で説明してもらう時間を必ず作ります。判断の理由を言語化させることで、本人自身が自分の思考のクセや抜け漏れに気づけるようになります。これは、正解を教えるより、はるかに定着率の高い育成方法だと感じています。
3. 失敗した経験を、そのまま次の判断材料に変える
失敗したとき、リーダーが代わりに答えを出してしまうと、本人はその失敗から学ぶ機会を失います。何が足りなかったのか、次はどこで気づけそうかを一緒に振り返り、失敗そのものを次の判断材料として本人の中に残していくようにしています。
4. パートナー(外部人材)にも、同じ姿勢で向き合う
70名規模のパートナーとの協業では、社員以上に「背景や前提がバラバラなメンバーをどうまとめるか」が問われます。パートナーだからと丸投げにせず、判断の背景や事業の目的を共有したうえで動いてもらうことで、単なる作業者ではなく、判断できる戦力として関わってもらえるようになります。
育成する側が持っておくべき視点
「育てる」と「甘やかす」は違う
任せる範囲を広げていく過程では、当然うまくいかないことも出てきます。ここで先回りして失敗を防ぎすぎてしまうと、本人の成長機会そのものを奪ってしまいます。致命的な失敗にならない範囲を見極めたうえで、あえて経験させる判断も、育成する側の重要な役割です。
育成は、短期的な生産性とトレードオフになることがある
新しいメンバーに任せるより、自分でやった方が早い——そう感じる場面は必ずあります。しかし、その場の効率を優先し続けると、チーム全体の成長は止まってしまいます。目の前の生産性と、中長期的なチームの成長のバランスを意識して判断することが、育成担当者には求められます。
まとめ
20名の社員と70名のパートナーを率いてきた経験から言えるのは、部下育成とは、答えを渡すことではなく、本人が自分で考え、判断できるようになるための環境と機会を用意することだということです。
- 全員に同じ教え方を当てはめない
- 「できるようになるまでの距離感」を本人目線で見極める
- 結果ではなく、判断のプロセスにフィードバックする
- 任せる範囲を段階的に広げ、失敗も次の判断材料に変える
短期的には遠回りに見えても、本人が自分で判断できるようになることが、結果としてチーム全体の力を底上げしていく——これが、長年の育成経験を通じて実感していることです。

