悩みの例

例えば、会社の上司との人間関係に悩んでいる人がいたとします。
その人が言う上司の様子は以下。

  • 事あるごとに怒りのこもった、または、威圧的な指摘をしてくる
  • どんなに頑張っても認めてくれない
  • 進捗状況を報告しようと話しかけても、話さえまともに聞いてくれない

どうやら相談者は嫌われている様子。
(相談者から見たら)明らかに理不尽な理由で嫌っている。

どうしたら良いか?

あまりにも度を過ぎている暴言を頻繁に浴びせられたり、身の危険を感じるなら、もはや自力解決は難しいですから、社内のコンプライアンス窓口や各種相談窓口などの専門機関にすぐ相談してください。

多くのケースでは、なにかに抵触している訳では無いが、あなたの考える『悪いあの人』としての上司が悩みのタネ。

この場合、まず、こちらからすり寄る必要はない、と考える。

なぜならば、「仕事」とは社内の人間から気に入られることではないから。

自分自身の隠れていた【目的】をあぶり出す

そうは言っても、上司から嫌われたら仕事にならないですよね、という返答がありそうです。

「上司に疎まれているから仕事ができない」
「私の仕事がうまく行かないのは、あの上司のせいなのだ」

「うまく行かない仕事」への口実として上司の存在を持ち出している。

むしろ、「嫌な上司」の存在を必要としている。
言い換えると、「この上司さえいなければ、私はもっと仕事ができるはずだ」と。

これを「人生の嘘」と呼びます。

「あの上司がいるから、仕事ができない」と考える。
この考え方を「原因論」と言います。

一方、
「仕事をしたくないから、嫌な上司を作り出す」と考える。
あるいは
「できない自分を認めたくないから、嫌な上司を作り出す」。

「原因論」に対してこれらの考え方を「目的論」と言います。

この「目的論」的観点から物事を考えてみると、本来の行動とは別の視点(この場合ですと、『嫌な上司』)に注目することで、自身が本当は直視したくないこと(この場合ですと、仕事をしたくない、できない自分を認めたくない)が浮かび上がってきます。

意識的にしろ無意識的にしろ、直視したくなかったことが浮かび上がってきますから、気分は不愉快になります。ここで、不愉快な気分に飲み込まれずに、シンプルに次の行動を考えます。

  • 「仕事をしたくない」こととどう向き合うか
  • できない(業務遂行能力が低い)自分をどうしていくか

「仕事をしたくない」に対処する

もし、いわゆる会社員生活が嫌になっているのであれば、いっそフリーランスや起業、自営業を考えてみるのもいいでしょう。

そこまでドラスティックな変化を望まないのであれば、組織構造が異なる企業への転職も考えてみてもいいでしょう。

上意下達の組織体質が合わないと感じているなら、成果主義やフラット構造の企業を探してみるのもいいでしょう。

組織論を学んでみるのもおすすめします。

人間は生物的進化とは別に組織体系についても進化させてきています。

詳しくはこちらの書籍を紹介しておきます。ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

「仕事をしたくない」がそもそも「働きたくない」ということかもしれませんね。

そもそもなんのために働いているのでしょう?

多くの人は、生活のための金銭を得るためですよね。

では、世の中金銭を得るために働いている人というのはどのくらいいるのでしょうか?
逆に、働かずして金銭を得ている人はいるのでしょうか?

これらシンプルな疑問の答えに、自身がどう行動すべきか見えてきます。

結果、今までとは異なる環境に移ることになるのかもしれません。

自分で環境を作り出すことを決意し、準備を始めるのかもしれません。

回り回って、今の環境でよしという結論に至り、現在の環境改善を始めるのかもしれません。

どのような結論が出るにしろ、最終的にご自身がなにか具体的に行動をする必要があることに気づきます。

『不快』という警報をどうやって止めるか

次のように、「仕事をしたくない」という気持ち自体を否定し、向き合わないこと。

『「仕事をしたくない」ということを思うこと自体おかしい』
『「仕事をしたくない」と思ってしまう人間は怠惰だ』
『「仕事をしたくない」と思ってしまうのは非常識だ』

それらが『人生の嘘』を作り出し、問題の解決を難しくしています。

発生してしまった「仕事をしたくない」という気持ち自体を、否定してみたところで消すことはできません。

存在しているものへの否定はますますその存在を強化してしまうし、何も行動せずに、その存在自体を消そうとする行動や思考になりやすい。

『最初から無ければ良かった』『居なくなって欲しい』『消えてしまいたい』と、存在が無いこと・無くなることを所望し続けてみても、状況は何も変わらないことは自明でしょう。

誤解をしないように付け加えると、『居なくなって欲しい』『消えてしまいたい』と思ってしまうことは問題ありません。

これ自体を思うことは、状況が『不快』という警報ですから、頭を過ることはあるでしょう。

問題なのは、状況が何も変わらない・変えられないことに注目し、警報が鳴り続けること。

言い換えると、変えられないことに執着し続けることは、ずっと警報が鳴り続けている状態ですから、心にも体にも非常に不健全な状態。

以下のように向き合い、答えをシンプルにして、一つ一つ警報を止めていきましょう。

できることは、

  • この気持ちに従い行動する
  • この気持ちを変化させる行動をする

の何れかだけです。

とてもとても「仕事をしたくない」という人は、とことん仕事をする時間を少なくして金銭を得られる方法を追求してみたら良いと思います。(当然ですが、違法行為や人道に外れる行為は避けるべきです。)

「仕事をしたくない」から「仕事をしたい(仕事が楽しい)」に変化させる(近づける)ことも考えてみて良いと思います。

これらの行動をご自身がすることに関して、『悪いあの人』~「嫌な上司」は関係がないことに気づきます。

例えば、あくまでも「仕事をしたくない」を追求するのであれば、そもそも今の会社を辞める方向に動くと思います。

その時点で雇用契約はなくなりますから、時間に縛られることはありません。

いずれ抜ける組織ですから、そんな上司に執着している余裕等ないですよね。

「仕事をしたい(仕事が楽しい)」に変化させるの方はどうでしょうか。

元々今やっている業務内容や取引しているお客様はいい人で、日常業務は楽しい。
でも、上司は嫌な言い方や応対しかしてこないので、それで仕事は一気に面白くなくなる。

この場合、日常業務は楽しくできています。しかし、上司とのやり取りが面白くない。

面白くない出来事の起因はたしかにその上司ですが、本当に「仕事をしたくない」に塗りつぶされることでしょうか?

善か悪か、白か黒か、仕事をしたいかしたくないか。

嫌なことが一つ起きると、それに塗りつぶされがちです。

そこばかりに注目するのではなく、実は有り難い出来事(上記例は業務内容が楽しい、お客様はいい人、そして忘れがちですが日常生活がいつも通りおくれていること)が日常的にたくさん身の回りには起きています。

それに気付いて、感謝しましょう。

実は楽しんでいるのに、気付いていないことが無いか、丁寧に点検してみましょう。

しかしながら、案外と楽しんでいる=仕事をしたいの要素が多いと気付いたところで、「嫌な言い方」をされ続けるのはイヤですよね。

次に、その対処方法を考えてみます。

嫌な言い方をする人に対処する

さて、上司が嫌な言い方しかできない理由は以下です

  • その上司自身が物事を指摘されるとき嫌な言い方をされてきたので、そのような言い方しか知らないから
  • 嫌な言い方をした方が従う人が今までは多かった(ような気がする)から(あくまでその上司体験)
  • 指導者・管理職として未熟で、実は指導やリーダシップを体系立てて学んでいないから

この理由を見てお気づきでしょう。

そう、あなたではどうしようもない理由です。

『嫌な言い方しかできない上司』の問題は、その上司の問題であって、あなたの問題ではありません。

また、このように考えるよう訓練してみてください。

  • 上司の「嫌な言い方」に注目するのではなく、内容自体に注目する
  • 具体性のある言葉だけに注目する

これを意識するだけで、上司が何を言いたかったのか、また、何に困っているのかを見抜くことができます。

例えば、以下のように上司から言われたとします。

「この前提出してもらった資料、誤字脱字だらけで全然だめじゃないか。お陰で私が1時間かけて修正する羽目になったぞ。前の部署や研修で習ってこなかったのか?入社して5年目なんだろ?どうしてこんな事もできないんだ?」

すいません、以後気をつけます…みたいなやり取りが目に浮かぶようですね。

謝罪して、気をつけます、だけでは同じ誤りを繰り返してしまうことは火を見るよりも明らかです。

コーチングや行動科学マネジメントの観点からは、この上司の指摘方法が適切ではないことも問題ではあります。

ですが、今回は部下の立場側のお話ですから触れません。(別のナレッジで記載したいと思います)

「内容だけに注目する」の具体的な内容とは以下です。

  • 資料が誤字脱字だらけだった
  • 上司でも修正するのに1時間かかった

以下の点については無視します。

  • 「全然だめじゃないか」
  • 「習ってこなかったのか?(習っていてできるはずだぞ)」
  • 「入社して5年目(だからできるはずだぞ)なんだろう?」
  • 「どうしてこんな事もできないんだ?(できると期待していた)」

これらの嫌な言い方や、相手の言葉の裏に隠れている期待と失望に、動揺させられてしまいがちです。
また、この言葉は、あなたを『攻撃している』と認識してしまいがちです。

ここで、このように考えます。

  • 嫌な言い方は、『上司の課題であって、私の課題ではない』
  • 上司の期待と失望は、『上司の課題であって、私の課題ではない』

これを『課題の分離』と呼びます。

実際、嫌な言い方を解決する責任を負うのはその上司にしかできません。
また、上司自身の『勝手な』期待と失望もその上司自体がどうにかすることです。

相手が期待していることを察知すると、反射的にその期待に応えたい、と承認欲求が鎌首をもたげてきます。

しかしながら、その期待とは言い換えると「挑発」であったり、打算的であったりすることが多いです。

相手の『勝手な』期待なわけですから、本来それに応える必要はありません。

期待に答えるかどうかは、『あなたの課題であって、上司の課題ではありません。』

さらに、その嫌な言い方に被害はあるのか?を考えてみます

  • そんな言われ方されて愉快ではない
  • むしろ不愉快・不快
  • 直接痛かったり、怪我をしたりしているわけではない
  • 生活に支障が出るわけではない

実際身体的に被害が出ていないことがわかりますね。

他者から受けた『不愉快』を解消するには言葉で伝える

しかし、不愉快であったことはどうやって解消しましょうか。

これは、言葉ではっきり伝えるしかありません。

「嫌な言い方をするのは上司の課題であって、あなたの課題ではない」のなら伝えたところで意味ないのでは?と思った方もいらっしゃるでしょう。

また、上司に対して、部下が不愉快・不快であることを伝えることなんてしていいの?という声が聞こえてきそうです。

『課題の分離』は、最終的にその行動の責任はどこにあるのか?を見極めるだけです。

相手の行動によって、この『私』が不愉快・不快になったことを伝えることはできます。

さらには、どうあってほしい、どうしてほしい、という要望を伝えることはできます。

その言い方が不愉快である、不快であり、改善してほしい、と要望として伝えるしか方法はありません。

最終的に、嫌な言い方を繰り返してほしくはないのでしょう?

であれば、「そのような嫌な言い方をしてほしくない」と伝えなければ、始まりません。

仮に伝えずにいたとしましょう。

その場合、自身の行動がどのようになるか、推測・想像してみましょう。

  • 嫌な上司の依頼を忘れたふりをして、実行しない
  • 嫌な上司の依頼タスクを色々理由をつけて、いつも遅延する
  • 嫌な上司との会議がある日に体調不良による休暇をとる

これらの行動は、嫌な上司を非常に意識した、いわば「復讐」行動に走りがちです。

『あなたが私を不快にさせたのだから、私もあなたを不快にしてやる』

暴言や暴力のようにわかりやすいルール違反や法令違反をするのではなく、仕事のパフォーマンスを下げる行動をすることで、仕返しをする、これを「受動的攻撃」と言います。

しかし、これらの行動、同時に自身のパフォーマンスや評判を下げてしまうことにお気づきですね。

アサーションコミュニケーションで、不快であることを伝える

「受動的攻撃」のような状態に陥る前に、言い方が不愉快である、不快であり、改善してほしい、と伝えます。

まずは、対応してもらったことにはお礼を述べます。

「資料の内容を確認くださってありがとうございます。また、誤字脱字を直してくださってありがとうございます。」

本来、資料の確認と誤りの指摘と指導は上司の仕事です。

ですが、実際はできていないことに対してダメ出ししかしていません。誤り箇所の共有を要求することは問題ありません。

「課長が1時間もかかって直してくださったということであれば、きっと私にとって難易度の高い作業だったに違いありません。
今後同様の誤りをしたくはありません。
後学のために何がどう誤っていたのか、共有いただけると幸いです。」

最後に、言い方が不快である気持ちを述べ、改善要求も出します。

「また、大変言いにくいのですが、ご指摘の内容で私が感じてしまったことをお伝えします。
「全然だめ」「入社して5年目なんだろ?どうしてこんなこともできないんだ?」などと言われたことに関しまして、大変不快に感じました。
なぜならば、私自身も「どうしてできないのか?」と問われましても、建設的な返答ができる言葉を持ち合わせていません。
また、「全然だめ」とすべてを否定するかのような強い言葉を言われて、大変ショックを受けました。
正直なところ、こちらの言葉に気を取られてしまい、素直にご指摘内容が頭に入ってきませんでした。
私が誤字脱字をしてしまい、品質の低い資料を作成してしまったことは事実ですし、その点につきましては先程も述べました通り、改善しなければならないことは承知しています。
きっと私に期待をかけてくださっての叱咤激励の言葉なのだと言うことも重々承知しています。
ですが、私の過去の習熟度や年次という私自身が変えることができないことを申し上げられましても、具体的に解決する行動を見つけることができず、混乱してしまいます。
強い言葉や私自身が行動して変えられないことをお伝えいただくよりも、私が具体的に行動して変えられることをご指摘いただければ幸いです。」

ここまで述べ、伝えることは必要です。

伝えている内容には、相手を否定したり、非難したり、言い返したり、をしていません。

自身の状態と気持ちをそのまま伝えています。

相手もOK、自分もOKな伝え方を「アサーション」と言います。

アサーティブではないコミュニケーションと比べてみる

一方、以下のような伝え方はどうでしょうか。

「大変言いにくいのですが、課長の指摘の仕方、いつもきつくて私の心はとても傷ついています。
たしかに私ができていないことは自覚もしています。
ですが、課長のダメ出しで、とてもモチベーションが下がりますし、やる気が無くなります。
大体今どきそんな指摘の仕方をするのはもう古いです。
課長の部下みんな、実は心の中で同じように思っていますよ。」

自身の状態と気持ちは伝えています。

ですが、「今どき古い」と相手を非難しています。

大きな架空の集団(みんな)を主語にして、言い返しています。

相手をNGにした伝え方はアサーションではありません。

主語を相手にした瞬間、非難や変化を迫る言葉になるため、防御反応、さらなる反撃が返ってきます。

その結果、防御反応、さらなる反撃で手一杯になりますから、当初の目的であった改善要求を伝えるが達成される確率は下がります。

このように、アサーションには「私」の気持ちや要求を伝わりやすくする効果があります。

主語を「私」にすることを心がける

相手もOK、自分もOKを心がけた言葉選びをするために、主語を「私」にして伝える内容を組み立てることを心がけます。

次のように主語を「私」と「あなた」で並べてみます。

「私」は、◯◯な気持ちになった。
「私」は、◯◯のようにしていただけると助かります。

「あなた」が、◯◯したから、◯◯な気持ちにさせられた。
「あなた」が、◯◯のようにしないから、私の行動がうまくいかない。◯◯をちゃんとしてほしい。

いかがですか?

◯◯の部分に色々と思い当たる言葉を当てはめて、読んでみてください。

どちらが抵抗感が少ないですか?

相手に伝えることは、自分の課題

自分の気持ちを述べ、改善要求をする、ということはあなたの課題です。

その後相手がどのように反応、行動するのかは、相手の課題であり、あなたの課題ではありません。

相手が好ましい行動をするのかしないのかは関係ありません。

好ましい行動をするようなら、問題解決です。

好ましくない行動が続けられるのであれば、上司の上司と会話することを考える、人事異動を申し出る、転職を考える、など具体的な次の行動に移るだけです。

おわりに

いかがでしたか。

対人関係について、私なりに学習・実践してきたことをアウトプットしていきます。

このナレッジが少しでもお役に立てると幸いです。

ナレッジの内容だけでなく、メンターとしてサポートを受けたい方は以下プランをご検討ください。

聞いてほしい、今より良くしたい、良くありたい
https://menta.work/plan/11322?ref=mentor_profile