1on1では、どのようなテーマで対話をしていますか?

対話の目的の一つとして「現在の仕事に真剣に取り組んでもらうこと」があります。今回は、その目的を達成するための1on1について解説します。

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結論

  • 1on1のトークテーマは、ずばり「部下のキャリア」です。
  • ただキャリアについて会話をしても、将来の不安をさらに煽ってしまうのではないか?今の仕事の不満をさらに助長させるのではないか?と懸念される方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな不安を払拭するために、具体的な事例を交えて解説します。

キャリアという言葉の語源と定義

  • まずキャリアという言葉の語源から解説します。キャリアという言葉の語源は、ラテン語の「carrus」に由来しています。これは「車輪のついた乗り物」を意味する言葉で、そこから派生したフランス語の「carrière」は「道路」や「競走路」という意味を持ちます。さらにそこから転じて「人生の道のり」や「職業上の経歴」という意味で使われるようになりました。わかりやすく2つの定義でまとめました。

  • 広義の意味では、「生き方」「人生」

  • 狭義の意味では、「職業、職務の経験」

ではマネージャーとメンバーの間で行われるキャリアは、どのような意味があるのでしょうか?

キャリアについて対話する意味

  • ミドルマネジメントと部下の関係において「キャリア」を対話する意味は

    「将来、どうなりたいか?どうしたいか?それに向かって、今の職場や仕事で何を考えて、どのように向き合って、何をするのか?」

と我々は考えています。ただキャリアという言葉は、様々な考え方があるため、考え方を整理していきます。

キャリアの考え方

  • キャリアには様々な考え方が存在するため、一般的な考え方を整理します。

    日本的・伝統的なキャリア観

  • 一つの職業や専門分野において、時間をかけてスキルを磨き、地位を上げていくというキャリアの考え方です。階層的な昇進や組織内での地位の向上をキャリアの成功と見なします。

欧米的・境界がないキャリア観

  • 境界を越えて多様な会社・組織を経験し、様々なスキルや知識を身につけるキャリアの考え方です。会社・組織間の移動が頻繁であり、給与やポジションをあげるために転職を活用します。

    ナラティブキャリア

  • 個人の人生の物語としてキャリアを捉える考え方です。経験や出来事をストーリーとして語り、自己理解やアイデンティティの形成に重きを置きます。

    ライフステージキャリア

  • 人生の異なる段階でのニーズや役割の変化に応じるキャリアの考え方です。例えば、若い頃は学習と成長に重点を置き、中年期には安定と達成を求め、老年期には知識の伝承や社会への貢献を重視するなどです。

    プロティアンキャリア

  • 個人の価値観やニーズに基づいて自己実現を図るキャリアの考え方です。組織に依存するのではなく、自分自身でキャリアを形成し、変化に柔軟に対応していくことが重要だと考えます。

どの考え方が、良い悪いというものではありません。キャリア(広義・狭義ともに)をどう捉えるかは、その人の人生観・価値観に依存するからです。

マネージャーがメンバーのキャリアを考える必要性があるか?

  • ここまでキャリアについての前提知識を解説しました。以下のような疑問を感じる方が多いのではないでしょうか?

  • 「キャリアは、人それぞれだから、マネージャーが一緒に考えてあげる必要はないし、そもそも踏み込み過ぎじゃないだろうか?」

  • この意見は、仰るとおりかなと思います。一方で、マネージャーがメンバーのキャリアに向き合うことで、部下のポテンシャルを最大限に引き出し、組織の成長に貢献することに繋がります。具体的な効果を解説します。

  • 効果1:関係性の構築
    部下のキャリアを理解することで、信頼関係を築き、より深いレベルでのコミュニケーションが可能になります。部下の立場からすると、自分の人生と真剣に向き合ってくれるマネージャーは信頼する上司となります。

  • 効果2:今の仕事に向き合う意味や意義を考えさせる
    部下がキャリア(広義な意味の生き方や人生)について向き合うことで、自分の将来を考えるきっかけとなります。将来や夢が言語化されることで、今の会社や組織や仕事に対する意味付けを捉え直すことにも繋がります。

マネージャーが部下のキャリアに向き合う効果が理解できたと思いますが、次の疑問として関わる範囲や深さに対する疑問が湧くかと思います。

メンバーのキャリアにどこまで関わるべきか?関わりたいか?

どこまで関わるべきかどうか?

  • これも多くの方が、疑問に感じる問いです。

  • 結論は、相手と自分の関係性によって変わるので、一概にどこまで?という線引きは出来ないというのが、答えです。言い方を変えると、線引きを明確にすべきではないというのが、私自身の考え方です。なぜなら人生や生き方については、そもそも相手に伝えることを躊躇する人と躊躇しない人がいるからです。マネージャーは相手によって対応の範囲や深さを変えるべきだと考えています。

どこまで関わりたいか?

  • この問いは、私からマネージャーである皆様への問いです。

  • 相手の考え方によって対応範囲や深さを変えるべきだと前段で言いましたが、マネージャー側も人間であるため、深く関わりたい/関わりたくないと意見が様々ある点も認めるべきだと考えています。その前提を踏まえた上で、「メンバーのキャリアにどこまで関わりたいですか?」

  • この問いは、進化させると以下のような問いにもなります。

    • 進化させた問い1:「自分はどんなリーダーでありたいか?」
    • 進化させた問い2:「自分が尊敬したリーダーはどんな人だったか?」

どちらも実際に実在する人物、漫画やアニメの登場人物など自分が目指すべきリーダーや尊敬するリーダーを思い浮かべると考えやすいです。

部下のキャリアに関するスタンスが明確になったら、次は具体的な1on1での会話内容について解説します。

1on1でキャリアについて会話する際の問い

問いのポイント

  • 部下に問いかける内容のポイントは2つです。

    • 逆算思考
    • 過去の成功体験からの強みを言語化
  • 逆算思考は、部下がどうなりたいか?の時間軸をできる限り長く考えてあげることです。問いかけ方の種類は、様々あります。5年後、10年後は?、あなたのお父さんやお母さんと同じ年齢になったら?、死ぬ間際を考えると?など問いかけ方は、相手に応じて変化させてください。

  • 未来に対する問いかけで、うまくキャリアについて会話が出来ない場合には、過去に対する問いかけを行いましょう。特に、学生時代に取り組んだことでその人の成功体験を確認しましょう。褒められた経験、成功した経験など何かしらポジティブな経験があります。そこから、その人なりの強みを言語化して未来にどう繋げるかを会話してください。

ここまでは抽象的な内容が多かったので、次からは具体的な事例で解説します。

ケース:周囲に対して不満がある部下

具体的な事例は以下のような状況でした。

不満の種類:周囲がうまく動いてくれない。
自分は熱量高く仕事をしている、したいけれど
同じ熱量で動かない人への不満があった。

この状況で、問いかけた内容とやり取りは以下の通りです。

マネージャー「なぜ周囲が動かないと思う?」 
メンバー「やる気が足りないし、スキルもないんですよ!(怒りながらの口調)」
マネージャー「色々な要因はあると思うけど、マインド・スキル・リソースのどれが根本原因だと思う?」
メンバー「マインドですね。常に後ろ向きでリスクしか考えてないんです。」
マネージャー「なるほど。なぜそのマインドになってるか?はどう?」
メンバー「それは、、、わからないです」
マネージャー「自分が関わる関係者が動いてくれないときには、なぜ動かない/動けないのか?理由がわかったら、誰から誰に何を働きかける必要があるのか?を考える必要があると思わない?」
メンバー「たしかにそうですね・・・」
マネージャー「あなたは、将来マネジメントにチャレンジしたいって言ってたよね?マネジメントは組織や人を動かすための思考やスキルが必要じゃない?今の状況に対して何が出来る?コントロール出来るもの/出来ないものを切り分けて、原因と対策を考えるのはどうかな?」

ケース:どのように変わったか?

  • 前述のやり取りの結果、未来の理想から逆算して何が課題か?を明確にすることができ、「不満」から「提案」へ思考と行動が変わりました。

まとめ

部下とキャリアを会話する際のポイント

  • これまでに伝えた内容から会話する際のポイントは以下のつです。
    1. キャリアの定義について認識合わせ
      部下が会話したいキャリアの文脈は以下のどちらであるかを認識合わせした上で会話をスタートしましょう。
      • 広義の意味では、「生き方」「人生」
      • 狭義の意味では、「職業、職務の経験」
    2. キャリアには答えや成果がないという前提とする
      あなたのキャリア論が部下にも適用されない可能性を前提とする。部下が歩んだ人生や体験によってキャリアは異なるものという前提で接すること
    3. 自分のリーダー論を明確にする
      あなたはリーダーとしてどうありたいか?どうあるべきか?を明確にして、その上でメンバーのキャリアにどこまで関わりたいか?のスタンスを明確にしましょう。
    4. 1on1を実行する際のポイントは逆算思考&強みの言語化
      逆算思考で、将来どうなりたいか?を部下と会話すること。さらに部下の原体験から強みを言語化し、理想と現状のギャップを明確にして、今の仕事に真剣に向き合える1on1を実施しましょう。

1on1がうまく実施できない方へ

  • 1on1自体がうまく実施できていないという場合には、メンバーの価値観を理解されていない可能性があります。まずはメンバーの価値観を理解して、メンバーがどんな人間であるか?を理解するところから始めてみませんか?詳細は別の記事(価値観を活用したマネジメント)にまとめていますので、そちらも合わせてご確認ください。