「英語の勉強をしたいのですが、何か良い目標とか指標ってありますか?」と聞かれたとき、僕が最初に答えるのは「英検の勉強をすると良いですよ」ということです。英検を受ける上では、リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングのすべての要素が重要になるため、包括的な勉強が可能になるためです。

しかし、こう言うとほぼ必ず次のように返されます。

「でも、英検1級の単語なんて日常的には使わないですよね。それならTOEICの勉強とかをしたほうが良いんでしょうか」

実際、英検1級を持っていなくても困らない程度の会話をすることはできるようになるでしょう。シーンを限定すれば、かなり流暢に喋ることもできるようになってくるはずです。その意味で、確かに英検1級は無理に目指す必要のあるレベルではないかもしれません。

しかし、まず現実として、英検1級の単語は日常でよく使います。具体的には、英字新聞、経済雑誌、映画、一般的な本の中など、英検1級の単語帳で覚えるような単語が当たり前のように使われている場面は枚挙に暇がありません。僕自身、翻訳家として日頃から英語に触れる回数は多い方ですが、英語で調べ物をしなければならない場合などもあり、そういったときには英検1級の単語帳で覚えたような単語が当然のように登場します。

敢えて言えば、『英検1級の単語なんて使わないよ』と言う人は、『英検1級の単語が必要無い範囲でしか英語を使っていない』ということに過ぎないのです。もちろん、それが悪いとか、劣っているといったことは絶対にありません。しかし少なくとも、英検1級の単語の有用性を語る上で、偏ったデータで断じていることは確かであると言えるでしょう。

確かに、『英字新聞も経済雑誌も読まないし、映画は字幕か吹き替えで良いし、英語で本を読むこともない。ただ、日常的な会話や、ちょっとしたメッセージのやり取りができれば良い』という人にとって、英検1級の取得は無用の長物となる可能性もあります。ただ、英検1級を持っていることが何かにとって"無駄になる"ということはありません。英検1級の単語力や読解力、発信力があるということは、ほとんどの業務や場面において、英語を使いこなすことができる能力の下地を持つと言っても過言ではないでしょう。

そして、本当の意味で『英語を使いこなせる』というのは、きっとそういうことではないかと僕は考えています。英語の勉強は、『〇〇ができたからこれでもうOK』というようなものではありません。使わずにいるとあっという間に能力は錆びついてしまいますし、どれだけ勉強しても知らない単語や表現に行き当たることでしょう。しかしそれをむしろ楽しむことができれば、いつの日か、いつの間にか、「あれ? 自分、英語使えるな」と感じる日がくるはずです。

もちろん、万人にとって『英検1級の取得を目指すことがマスト』であるというわけではありません。ただ、世間で言われているよりも『英検1級の英単語』は汎用性が高く、覚えておいて損はないものです。もしもあなたが何を目標に英語を勉強すれば良いか分からないと感じるなら、まずは英検1級を目指してみるのも良いかもしれません。

あるいは自分に合ったオーダーメイドの目標が欲しいということであれば、僕で良ければお手伝いさせて頂きます。無理のない目標を立てて、自分のペースで勉強していきましょう。