先日は「英語学習の迷信を解消する」ということで、6つの嘘のうちの3つを解説しました。

本日は、後半の3つを解説します。英語学習とは夢物語ではなく現実に根ざしたスキルアップの手段です。つまり、正しいアプローチや向き合い方が必要になるのです。その機会のひとつとして、この場をお役立て頂ければ幸いです。

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4: 発音は大切/不要である

英語の学習において、発音は「大切だ」とも「重要でない」とも言われます。これは、どちらも正しい話である一方、どちらも間違っているとも言えます。

まず、英語において『完璧な発音』を身につけることは、必須ではありません。日本語を母語としても私たちは、どうしてもネイティブの発音と比べると訛りが残りがちです。しかし、それは日本語を母語にしていない非ネイティブも同じこと。例えばフランス訛り、イタリア訛り、インド訛りなど、ネイティブとは異なる発音の英語話者はたくさんいるのです。

まずは伝えることが第一。自分の発音が完璧でないからといって恐れてしまうのはもったいないことです。

しかし一方で、発音は綺麗であるに越したことはありません。完璧にネイティブな発音でなかったとしても、それに近づけることはできます。そして発音が綺麗であれば、もちろん話している内容も伝わりやすくなります。また、自分で正しい発音を身につけていれば、リスニングの際に発音を聞き取りやすくなり、結果としてリスニング力も向上するのです。

5: 受験英語は無駄

義務教育から始まり高校でも英語を勉強したはずなのに、日本人の多くは英語を話すことができない。それは、いわゆる受験英語では英語を使いこなせるようにはならない証拠だ。

これは一見すると的を射た意見ですが、実際には穴があります。そもそもこの意見を言っている人の多くは、「受験英語が得意だった」わけではないのです。また、受験英語は得意だったが英語を使いこなせるようにはならなかったという人は、大抵の場合、受験英語から以後、英語を勉強していないのです。どれだけ得意な教科だったとしても、使わない知識は失われてしまって当然です。

確かに、受験英語だけで「英語のすべてを網羅する」ことには無理があります。しかし受験英語で学べることは、英語の基本的な知識やノウハウであり、それは実践的な英語能力の土台になるものなのです。これは、「受験英語は何となく覚えている」という人は、英語を実践で活かすための能力の土台を充分備えているということでもあり、これから学ぶという人にも体系的に学ぶ術が既に用意されているということなのです。

6: 英語さえ勉強すれば一発逆転できる

英語さえできれば何もかも一発逆転……というわけではありません。それは、『英語が使える』ということは、『日本語でできることを英語でもできる』ということだからです。つまり、英語を実際に使いこなしていく、キャリアで活かすとなると、下地となる日本語での能力が重要になってくるのです。すると、キャリアアップを目的として英語を勉強するという場合、英語よりもよりキャリアアップに直結するスキルがあるという場合もあるでしょう。

しかしこれは、下地となる能力がある人が英語を学べば、元々の能力に掛け算をするようにして大きな価値を生み出すことができるようになるということでもあります。例えば勉強熱心な人や情報収集が上手な人が英語を学べば、英語の情報ソースから知識やノウハウを得たりすることもできるでしょう。英語でやり取りができれば、世界中で仕事を受けたり、世界的な賞に応募して自分の技術を試したりもできます。セールスが得意なら、世界中の英語が通じる人々が見込み客に成り得ます。それは大きなアドバンテージになるはずです。

また、データとして『英語ができる人は年収が高い』といったことも言われています。これは『TOEICで高得点を取れば年収が上がる』ということ"ではありません"が、英語を扱える能力があればそれだけチャンスも広がり、そのチャンスをものにすることができれば収入アップに繋がるということを示しています。

参考URL1: https://jobotaku.com/annual-income-up/
参考URL2: https://www.rarejob.com/englishlab/column/20161015/

もちろん、この場合の『英語ができる』というのはTOEICが具体的に何点であるというようなことではなく、ビジネスシーンで英語を運用できる、『実践的な英語力』を持つということです。

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以上、前編と合わせて英語学習に関する6つの嘘や迷信について解説しました。こうした迷信は、キャッチーな英語学習メソッドが売りにされる場合や、「英語で人生を逆転」などの射幸心を煽るようなコピーで英語学習サービスが提供されるときに用いられるものです。

自分にとって英語の勉強は本当に必要か。必要だとしたらどうして必要なのか。どのようにそれを身につけていくことが望ましいのか。これから英語学習を始めるという場合には、まずはそのスタートラインを明確に引かなければいけないのです。