僕は英語学習のメンターとしてMENTAに登録していますが、基本的には翻訳家として活動しています。個人的に興味のある本を翻訳するほか、企業の大規模プロジェクトの翻訳者として活動するなど、色々なところで楽しくお仕事をさせて頂いております。翻訳という仕事自体が好きなので、自分でも天職を見つけたな、といつも思っています。

では、そんな僕がどうして翻訳家でありながら英語学習のサポートも行っているのか。これにはふたつの理由があるのですが、今日は、そのうちのひとつについてお話し致します。後編では、もうひとつの理由についてご説明させてください。

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最初の理由は、自分の体験を共有することが誰かの役に立つかもしれなかったから。僕は留学もせず、家庭教師もつけず、義務教育での英語勉強と独学によって英語を学びました。とは言えこれは僕がもともと英語が得意だったという話ではありません。実を言うと、中学二年生まで、僕は英語が一番の苦手科目でした。三人称単数のsの意味はもちろん、疑問文の作り方すら怪しかったと思います。「日本で生活するんだから、英語なんて要らない」とまで考えていました。

しかし高校受験を目の前にして、流石に英語の点数が全体の足を引っ張っているということに気付き、中学英語を中学校三年生の夏休みに総復習しました。このときに学んだのが、英語には理論的に理解できる部分と感覚が重要な部分があるということです。

確かに、留学をしたり、海外生活が長かったりすると、英語を感覚的に正しく使うことができるようになる人もいるでしょう。しかし、それは教える側としてはアドバンテージになるとは限りません。「感覚的なものだから、とにかくそう覚えてくれ」と言うしかなくなるからです。

しかし僕は、留学するためのお金や機会を得られなかったことから、「どうせなら、しっかりと理詰めで納得できるようにやろう、その上で感覚的に処理しなければいけないポイントは長期的に学んでいこう」と決めました。言い換えれば、英語を科学することに決めたのです。

この視点とアプローチは、ゼロベースで英語を勉強し、留学の機会を得られない人にとってもある程度有効であるものです。もちろん、"実践なき理論は空虚であり、理論なき実践は無謀である"とドラッカーが言ったことは事実です。それでも、「ただ慣れろ」と言うよりも、「少し時間を掛けてでも、ちゃんと英語を学びたい」と思う人、先人たちが体系的に分解してくれた『英語』という科学を充分に活用して飛躍的に英語力を伸ばしたい人、そんな人にとってのお手伝いならできるだろうと思いました。

かつては本当に英語についてゼロベースであった僕が、下地から学び、少しずつ高い景色が見えるようになっていった経験が、誰かの経験と重なって役に立つかもしれない。これがひとつめの理由です。

もうひとつの理由については、後編でご説明させて頂ければと思います。実は、僕が翻訳家であることと英語学習のメンターを行っていることには、密接な関係があるのです。