英語を学ぶことには、一定周期でトレンドや流行り廃りのようなものがあります。

しかし、そうしたトレンドには英語の一面だけをピックアップしているだけで、本当に使える英語力の醸成には繋がらない場合もあります。

そこで、よく言われている英語の勉強に関する迷信をご紹介し、それがどのように嘘なのかを【前編】と【後編】に分けてご説明します。

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1: 英語はとにかく話すことが大切、文法は不要

確かに、英語で話せるようになるためには話す訓練が必要です。そして日常的に話しているとき、いわゆる学校で習うような文法が意識されることは少ないでしょう。また、必要に駆られて英語でコミュニケーションを取ろうとしている間に、何となく英語が分かってくるということもあるかもしれません。

しかし、ただ話すだけのコミュニケーションには限界があります。例えばビジネスの場で英語を話したいという場合には、文法が支離滅裂だと、日本語なら「てにをは」がおかしいというような、あるいは言葉の誤用が多い、まとまりがない印象を与えてしまうといったような話し方になってしまうこともあるのです。

また、文法や語法などを知らずに英語を話してコミュニケーションするのは、コミュニケーションの相手がこちらに寄りそってくれているから成立するのであるということも忘れてはいけません。相手の英語レベルに合わせて会話をすることができないと、それだけ相手にコミュニケーション上でのコストを強いることになるのです。

実際に話すときに文法が意識されない、これは確かに本当です。しかし、それは文法を覚える必要がないということではありません。文法を当たり前のものとして身につけている人が、文法を意識せずとも正しい英語を話せるようになるのだということなのです。

文法は、「英語を使う上で一般化された共通のルール」です。それが現実世界では必ずしも守られてはいないとしても、このルールを学ぶことは英語を使いこなす上での近道であることは間違いありません。急がば回れ、というわけです。

2: とにかく多読することが大切

英語を学ぶ上では「多読」が重要だと言われることもあります。これもまた、場合によっては正しい話です。多読することで数多くの文法や語彙、語法に触れることができるほか、表現のパターンを増やすこともできるでしょう。

しかし多読が有効なのは、あくまで「精読」ができる前提での話です。「ゆっくり読めば内容が分かる」という人が、質より量をこなす方が伸びが良いという段階で取り入れるのが「多読」という学習方法なのです。

簡単に言えば、ただ英語の本のページを捲っているだけでは意味がありません。多読する中で知らない語彙や語法に数多く触れ、それを学ぶということが必須なのです。そして当然、その多読の中で本の内容も理解できなければいけません。本の内容も頭に残らず、ただアルファベットをなぞるだけ。そんな多読は効果があまりに小さいのです。

3: 英語は聞いていれば分かるようになる

リスニングを伸ばしたいという場合に、「とにかく多聴するべき」と言われることがあります。英語の文章、あるいはその訳を耳から受動的に聞いているだけでも、そのうち英語が分かってくるというわけです。

これは、先に説明した「多読」と同じことが言えます。リスニングをする上では、時間をかけて一言一句を聞き漏らさないように聞く「精聴」と、とにかく数をこなす「多聴」のバランスが重要なのです。ゆっくり聞けば分かるものを、速度を上げたり量を増やしたりして聞いてみる。それで分かるようになれば、本物のリスニング力がついたと言えるようになるというわけです。

そしてもちろん、その上で話すトレーニングをしなければ話せるようにはなりませんし、書いたり読んだりするトレーニングをしなければそういった技能も伸びはしません。

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以上、英語の嘘、1〜3をご紹介しました。どれも英語学習での『流行りの学習方法』として流行ったもので、確かに『全く効果がない』というほどのことはありません。しかし、それだけをやっていればOKというようなことはないということがお分かり頂けたのではないかと思います。