昨今、「立ち止まることは現状維持ではなく衰退である」というような考え方が広く受け入れられているように思います。つまり、前に進むべく足を出すことでようやく現状維持が可能なのであり、その足を出す速さや足を振る距離を広く取ることをしなければ、他の人よりも前に進むことはできないというわけです。この考え方が肯定されるような例は無数にあげることが可能ですが、個人的には、どんなことであっても後続の人々には後手のアドバンテージがあるということが特に重要なのだと考えています。

例えば、一昔前に英語を勉強しようとすれば、かなりの工夫や投資が必要だったかもしれません。YouTubeもありませんでしたし、オンライン英会話のようなものもありませんでした。しかし今の時代であれば、学ぼうと思えばほとんどお金をかけずに英語を学ぶことができます。それも、英語学習の理論も発達してきていて、自分に合った勉強方法を取捨選択し、より効率良く学ぶこともできるようになってきています。

それ以外にも、何か専門性のあることを学ぼうとするとき、僕たちは先人が書いた本を読んだりすることで、その知識や経験の少なくとも一端をあっという間に吸収することができます。つまり何かを学ぶという行為においては、後手の方が必ず状況的に有利なのです。先人が手探りで苦労して理解したことや成し遂げたことを、後手は先人の教えに従うことで比較的短期間で習得することが可能なのです。

これはつまり、先に勉強した方、つまり先人は、勉強し続けなければ簡単に後続に追いつかれてしまうということでもあります。英語に限らず、プログラミングやマーケティング、デザインの業界でも、同じことが言えるのではないでしょうか。もちろん、ある程度のレベル以上になれば「ここから先は誰でも習得に時間が掛かる」というところに行き着くこともあります。しかし少なくともそのレベルに達するまでは、間違いなく後続の方が環境的に恵まれているのです。

一方先人には、後続にないアドバンテージがあります。それが『経験』です。後続が知識やノウハウを短期間で身につけられることは、『経験の少なさ』の裏返しでもあります。先人は後続が持たない『経験値』を持つことによって、後続との差別化を図ることが可能になるのです。だからこそ先人は、常に学び続け、また実践から様々な経験を得続けなければいけません。それができなくなったとき、簡単に後続に追い抜かれてしまうのです。

もちろん逆に言えば、これは後続として勉強するときにはその利を存分に活かすべきであるということでもあります。使えるもの、吸収できるリソースはすべて吸収し、そして使うという気概で学びに取り組むことで、先人にも比肩する能力を短期間で得ることも可能になるかもしれません。