なぜ働き方改革はうまくいかないか。

コンサルが明快にお答えします。

根本的なスタート地点で誤りがあるからです。

冷泉彰彦氏が米国から冷静に見てコメントしているが分かり易いので、働き方改革のズレを引用して説明します。「働き方改悪」と冷泉氏は断言します。そのあと私の考えを記します。

『日本の生産性をダメダメにした5つの大問題』
 https://www.mag2.com/p/news/426391

キーワードは日本生産性本部です。時代の中で光と影が見え、イケイケだった頃の日本をそのまま引き摺るアタマの古い人たちが変化できないままガラパゴス化して日本政府にモノをいうという悪習が原因です。と同時に天下り先でもあります。

日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟国36カ国中20位(2018年調査)
経済大国といわれた1980年代で思考がフリーズしている
90年代以降の結果はダメダメで先進国中最低
旧態依然とした事務仕事
なぜこうも酷い状態になってしまったのでしょう。
その5つの大問題は次の通りです。

1.仕事が専門化されていない

・人事ローテは無駄。人事ローテの日本型人事は時代遅れ
・大学・大学院教育でスキル訓練は出来ている
・スキル訓練が出来ている即戦力を採用する

(解説:終身雇用を原則とした以前の日本の会社は、優秀な社員をジョブローテーションで様々な部門で経験させてマネジメントスキルと経験を現場で付けさせ、最終的に双六上がりでマネジャ、経営者となる、長期人材育成型の人事システムでした。終身雇用が期待できない現代では時代遅れになったことは、誰もが認めるところでしょう)

(私信:とかく現場叩き上げを美徳とする日本、優秀なマネージャがヘリコプター散布されて強烈な数字を叩き出す欧米。この差はその現場を経験しないと理解不能でしょう。

2.権限が現場に下ろされていない

権限のあるヒトにはスキルと知識が無い
権限のあるヒトは良く分からないのに他人が決めると文句を言う
意思決定にダラダラ時間をかける

3.とにかく大勢が会議に出てくる

・1人当たりの会議参加時間が多すぎる(⇒参加不要の人が参加している)
・権限と知識・スキルが切り離されている(⇒2.前述)
・権限はあるがスキルが無いひとがダラダラしゃべって人の時間を奪う
・とにかく集めて見せておくCC文化(⇒CCメールでアリバイ作りと同じ)
・著名人を管理職を会わせて満足させるセレモニーの場(⇒個別にやれ)

4.コンプライアンスという言葉に踊らされている

・炎上を恐れて規則と記録の書類を大量に作りまくる
・経営者が「本当の正義」を理解していない

5.国際化が業務量を増やす

・中途半端な英語化では仕事が回らない
・日英二つの言語でダブル併記で走るので業務負担が倍になる
(私信:これ以外にもICTの致命的な遅れがあります)

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本来の働き方改革は、時間と労力を奪う非効率なものを排除し、日本の旧態然としたとした仕事のやり方を「生産性本部」という大ナタを振るって、仕事の現場を「改良する」はずでした。これにより現場は、

・文書作成が削減される
・会議参加人数を減る
・権限が移譲される
・コミュニケーションの効率化が進む
・そしてその果実として長時間労働が不要になる

これが働き方改革実現の骨子だったはずでした。ところが現実は、残業できないから管理職が実務を抱え込む(管理職には残業代は出ないからドンドン押し付ける)ことになり、現場は判断が遅れ硬直し逆効果を生む、という負のスパイラルを生んでいるのです。

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ここからは上記を元にした私信です。ポイントは、たった3つです。

【ポイント1】マネージャ教育がカンフル剤

日・米・欧の上場企業をエンジニアとして仕事してきた経験で日本の外から日本企業を見ると、問題の本質は実に単純であると断言できます。

このお粗末な日本型非生産的労働を激変させるカンフル剤があります。ぶすっと挿せば立ちどころに非効率生産病が治ります。

それは、マネージメント改革です。マネージャトレーニングが会社を、社会を救います。

日本はマネージャがマネージメントの教育を受けていません。これが致命的です。先に述べたように、マネージャはジョブローテーションにより、経験とスキルと長期計画で身に付けていましたが、終身雇用制が崩壊した今は、そのような悠長なことは許されません。

マネージャと実務者は完全に分けるべきで、実務者は業績の数値を現場で創造し、マネージャは実務者がいかに結果を出し易くなるか、環境を整える役割です。

マネージャにとって実務者はお客様なのです。ゆえに間違っても
「おまえ仕事しろ」「業績を上げろ」「残業するな」
などと部下に向かっては言えません。

マネージャのあるべき姿は、職場環境を整え、「業績の上げ方」を指導し、出来ないのなら原因を探ってフォローするコーチング能力です。

これには専門のマネージャー教育が必要で、そのトレーニングの後に何度もブラッシュアップしてマネージャスキルを上げる必要があります。それが業績アップに直結します。

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【ポイント2】会社のヒエラルキーは逆三角形

会社組織の見方も間違っています。会社は、

部下 << マネージャ << 経営者

という三角形のピラミッドで描かれるケースが多いですが、これが大間違い。下から上では重力に逆らっています。

生産の果実は末端の実務者が作ってくれる有難いものです。

三角形ピラミッドは逆さまにして、ロートの様に見立て、

経営者 << マネージャ << 部下

と部下が一番上とすべきです。水の流れと同じで、重力に従って高いところから果実を降ろして集めていくのです。

部下が上げてきた果実は部下の業績として認め、マネージャはそれらの業績を有難く受け取り自部門の業績として経営側に上げ、経営者は各部門マネージャの業績を集めて会社としての業績とするのです。

つまり会社組織のヒエラルキーは、図式で言うと末端の業務にあたる部下が一番上で、経営者が一番下で、ロートで業績の果実を集めるという図式になります。

この図式は非常に分かり易く、マネジメントの本質を表しています。

上から下への流れが滞れば業績は上がりません。逆に業績が上がらない時に、どこに支障があるのかも直ぐに分かります。

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【ポイント3】サルでもやってるマネジメントの極意

マネジメントには、マネジメントする側とマネジメントされる側の二つしか存在しません。サルをみれば見事にやっています。

・モノの生産においては「次工程はお客様」
・マネジメントにおいては「前工程がお客様」

この二つの原則を抑えておくだけで、誰もがスッキリとマネジメントできます。

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参考:

日本の労働生産性を上げる10の方法:脱社畜の働き方改革
 http://mikawaya1960.blogspot.com/2015/12/blog-post_24.html

問題解決能力に必要な事は何ですか?
 https://qr.ae/TSSMB4

あなたの問題解決のメソッドは何ですか?
 https://qr.ae/TScD2y
 

未熟な人間が決めたルールで非効率な仕事に対して、上級者が改善のためにアサインされた場合、どのように変えていきますか?
 https://qr.ae/TWrVs9

外資系企業はなぜ給与が良いと言われているのですか?日本の企業とどう違うのですか?
 https://qr.ae/TSSuND

チームがピンチにある時に、メンバーのモチベーションを向上させたジョークがあれば教えてもらえますか?
 https://qr.ae/TSSw4D

私のように20前後の若者に伝えたいことはありますか?ジャンルは問いません。
 https://qr.ae/TSSwxZ

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ここまでお付き合い頂いてありがとうございました。

皆さんの職場でマネジメントが上手に回り、不幸で無駄でバカバカしい仕事の仕方が、ここまで述べたカンフル剤で激変することをお祈りいたします。