大手メーカーで18年、組込みソフトウェアの開発とリーダー業務をしてきた「ざっきー」です。

僕はこれまでに3度の休職を経験しました。それでも今は復職し、リーダーとして働けています。

その回復の過程でいちばん効いたのが、リワークプログラムで学んだ「認知の歪み」の知識と「自動思考記録表」です。この記事では、この2つを実体験ベースで紹介します。

「同じ考え方のクセで、何度も苦しくなってしまう」「復職したけど、また不調にならないか不安」という方に向けて書いています。

※リワークプログラムに通うまでの話は、別の記事「エンジニアが休職から復職するまで|リワークプログラムの選び方と実際」で書いています。


なぜ「考え方のクセ」が再発予防のカギなのか

僕が2度目の休職をしたとき、原因を振り返って気づいたことがあります。

倒れる直前の僕は、仕事量よりも「自分の考え方」に追い詰められていたということです。

「リーダーならメンバーの質問に的確に答えられるべき」
「失敗したのは、自分の能力が足りないからだ。もっと成長しないと」

こういう考えを、当時の僕は「向上心」だと思っていました。悪いことだとは、まったく思っていなかったんです。

でもリワークで学んで、これは認知の歪み——事実とは異なる、偏ったとらえ方——だと知りました。この「クセに気づけるようになったこと」が、僕の再発予防の出発点です。

認知の歪み10項目

画像のタイトルを入れてください

認知の歪みとは、出来事や他人の行動を、事実とは異なる形でとらえてしまう思考のクセです。代表的なものが10項目あります。

自分に当てはまるものがないか、チェックしながら読んでみてください。

1. 白黒思考
すべてを「成功か失敗か」「0か100か」で考えてしまう。中間がない。

2. 過度な一般化
1度や2度のことを「いつも」と考えてしまう。「いつも失敗する」「いつも断られる」。

3. マイナス思考
何でもないことや良いことまで、悪いことに変換してしまう。上司の返信が遅いだけで「嫌われているからだ」と考える。

4. 結論への飛躍
根拠がないのに、悲観的な結論を出してしまう。異動先で「どうせ、できないヤツだと思われている」と決めつける。

5. レッテル貼り
たった1度のミスで「自分は敗北者だ」と、極端なレッテルを自分に貼ってしまう。

6. 過剰な拡大解釈・縮小解釈
失敗や短所は大げさにとらえ、成功や長所は極端に小さく見積もる。本当は得意なのに「Excelなんて、みんなできて当たり前」と考える。

7. 感情的決めつけ
論理ではなく感情で判断してしまう。不安だから「きっとうまくいかない」と決めつける。

8. べき思考
「〜すべき」「〜すべきでない」で考える。「リーダーは常に的確に答えるべき」——休職前の僕は、これの塊でした。

9. 個人化
自分と関係ないことまで「自分のせいかも」と関連づける。上司が家庭の事情でイライラしているのに「自分が何かしたかも」と考える。

10. こころのフィルター
悪い面ばかりに目が行き、良い面が見えなくなる。企画の評価が全体的に良くても、一人の批判だけが頭に残る。

大事なポイントは2つ

ひとつ目は、「これは認知が歪んでいる状態だ」と知ること自体に効果があるということです。

僕はこの10項目を知るまで、自分の考え方に偏りがあるなんて思ってもいませんでした。知ってからは、「あ、いま白黒思考になってるな」と、自分を一歩引いて見られるようになりました。気づければ、そこから抜けられます。

ふたつ目は、認知の歪みは「体調や環境で増えたり減ったりする」ということです。

疲れてくると、普段は出ない歪みが出てきます。逆に、改善していくこともできます。実際、休職した当時の僕は10項目中8〜9個当てはまっていましたが、今はほとんど当てはまりません。

つまり、「歪みが増えてきたな」と感じること自体が、不調の早期警報として使えるんです。

自動思考記録表:思考のクセを上書きする方法

「クセに気づく」の次は、「クセを修正する」です。そのための方法が、認知行動療法の自動思考記録表です。

リワークで僕がいちばん学びたかったのがこれで、なかなか変えられない自分の思考を上書きするのに、いちばん効果があった方法だと思っています。2度目の休職で学びましたが、3度目のときにも役立ちました。

やり方は、表を作って次の5ステップで書いていきます。テンプレートはネットで無料公開されているものが多いので、使いやすいものをダウンロードすればOKです。

  1. 苦手だなと思う場面を書く(例:進捗遅れを上司に報告する)
  2. そのときの気持ちを書く(例:怒られるのが怖い、情けない)
  3. 気持ちを数値化する(例:恐怖80%、自己嫌悪60%)
  4. 別の考え方・対策を考える(例:早く報告すれば対策の時間が作れる。報告は謝罪ではなく共有)
  5. 対策後に気持ちがどう変わったかを確認する(例:恐怖80%→40%)

ポイントは、これが「思考の予行練習」だということです。苦手な場面を事前にシミュレーションして対策を用意しておくと、次に同じ場面が来たときに、準備した考え方を使えるようになります。

画像のタイトルを入れてください

正直に言うと、一人でやるのはシンドイです

これは体験者として正直にお伝えしておきます。

やり方に慣れないうちは「これでいいのかな?」と不安になりますし、そもそも苦手な場面を一人で思い出すこと自体がつらい作業です。僕も最初は、かなり苦戦しました。

だからこそ、リワークのような場で専門家と一緒にやる価値がありますし、身近にそういう場がない場合は、誰かと一緒に取り組むだけでもだいぶ楽になります。

おまけ:もっと手軽な習慣「今日の良かったこと」

自動思考記録表がヘビーに感じる方には、もっと手軽な習慣もあります。

その日にあった「良かったこと」「嬉しかったこと」を、夜に思い出して書くだけです。

僕が休職中に書いていたのは、こんなレベルのことでした。

  • 久しぶりにお寿司を食べて嬉しかった。やっぱり美味しい
  • 夕日がきれいだった
  • 家族で公園に行って楽しかった

くだらないことでいいんです。「自信がない」「自分に価値なんてない」と思い詰めていた時期の僕を回復させてくれたのは、この小さな積み重ねでした。たくさん見つけられるようになると、「人生捨てたもんじゃないな」という気持ちになってきます。


最後に:一人で抱え込む前に

認知の歪みも自動思考記録表も、知識としては今日から使えます。でも、実際にやってみると「一人だと続かない」「自分の考えを客観視するのが難しい」と感じる方が多いはずです。僕自身がそうでした。

MENTAでは、休職・復職の不安、再発しない働き方づくり、思考の整理などの相談をお受けしています。「まだ相談するほどじゃ…」という段階でも大丈夫です。一人で抱え込む前に、壁打ち感覚で使ってください。

▼相談プランはこちら
https://menta.work/plan/11585

※この記事は僕自身の体験談であり、治療や医学的なアドバイスではありません。認知行動療法を治療として受ける場合や、不調が続く場合は、必ず主治医・専門家にご相談ください。