「ちゃんと考えているからこそ、進めない」

やることは決まっている、と思っていた。

メモを開く。論点が並んでいる。気になる点もある。得たい結果もある。
ひとつ選ぼうとすると、別の点が引っかかる。
それを整理しようとすると、また別の論点が出てくる。

これさえ決まれば動ける。もう少しだけ考えよう。
でも「もう少し」は終わらない。

気づくと、また最初から考え直している。

こんなに時間をかけているのに、何も決まっていない。
頭の中だけが動いて、実際には何も変わっていない。

意志が弱いのか。覚悟が足りないのか。
その言葉が外から来たのか、自分の中から来たのか、わからなくなっている。

でも、考えるのをやめようとすると、見えていた論点が気になって戻ってくる。
どこかに答えがあるはずで、もう少し考えれば見えるような気がしている。

ただ、重くなっている。

こういうとき、側から見ると「動けていない」という現象だけが見えます。
だから、意志が弱いとか、覚悟が足りないとか、そういう話にされがちです。
本人もまた、「なんで動けないんだろう」「動けない自分がよくない」と考えはじめて、問題がさらに複雑になっていきます。

でも実際には、考えが浅いから進めないのではなく、
見えている論点が多いぶん、それぞれを同時に扱おうとして複雑になっていることがあります。


論点が増えすぎて複雑になった現場

以前、CSの業務フローを整備していた子がいました。

設計自体はかなり堅く、考える力もある。
雑に進めたいわけでもなく、ちゃんと見たうえで進めようとしている。
実際に見せてもらった業務フローや設計書も、精度の高さがかなり際立っていました。

でも、実際に動く段階になると止まってしまっていました。

その子が見ていたものは、どれも間違っていなかったと思います。

  • 現場の反応
  • 実際に通るかどうか
  • どこまで整えるべきか
  • 何を優先すべきか
  • 進めた後に起こること

こういう論点がいくつもあって、しかも得たい結果も一つではない。
だから、考えれば考えるほど複雑になっていく。

こういうとき、単に精度を下げれば進む、という話ではありません。
必要なのは、現在の精度を維持したまま、どこに力をかけるかを絞ることです。


何を「今回の狙い」にするかを絞る

問題なのは、論点があることではありません。
それらを一度に全部扱おうとすると、重くなって動けなくなることです。

なので私は、何を今回の狙いとして置くかを整理する方に話を持っていきました。

全部を同時に扱おうとすると重くなる。でも、

「今回いちばん取りにいくものは何か」

が見えると、動き方は変わります。

  • 何を気にしているのか
  • 何を守りたいのか
  • 何を得たいのか
  • その中で、今回いちばん効果が大きいものは何なのか

そこが絞られていくと、複雑になって止まっていたものが、少しずつ動き始めます。

その子も、「考えてみます」で終わるのではなく、
その後、実際に動いていました。


このセッションでやっていること

こういうことは、業務フローの話に限りません。

進めたいのに進めないとき、
問題は能力不足ではなく、
気になる点と得たい結果が増えすぎて、複雑になっていることがあります。

このセッションでやっているのは、こういう止まり方を一緒に見ていくことです。

何が問題なのかを一つずつ分けて、どこで複雑になっているのか、
何を今回の狙いとして置くのかを整理していく。
すると、次にどこへ力をかければいいのかが見えやすくなります。


仕事でも、判断でも、何かを進めようとしているときでも、
ちゃんと考えているのに進めないなら、

それは考えが足りないのではなく、
論点が増えすぎて複雑になっているのかもしれません。