"伝わる指示"の共通ルール
小学生から社会人まで指導して分かった、"伝わる指示"の共通ルール
社会人女子チーム、大学生チーム、小学生チーム——26年間、年代もレベルもまったく違うチームのコーチをしてきました。
その中で痛感したのは、「言った」と「伝わった」はまったくの別物だということです。同じ言葉で指示を出しても、伝わる選手もいれば、まったく動けない選手もいる。最初の頃は「なんでできないんだろう」と選手側の問題だと思っていましたが、実は指示の出し方そのものに原因があることがほとんどでした。
この記事では、26年間の指導経験から見えてきた「伝わる指示」の共通ルールをお伝えします。チームのコーチだけでなく、職場で後輩・部下を指導する立場の方にも役立つ内容です。
「伝わらない指示」に共通する3つの原因
指導を始めたばかりの頃、私自身がよくやっていた失敗が3つあります。
1. 抽象的すぎる指示
「もっと頑張れ」「しっかり見て」——こうした指示は、言っている本人は分かった気になっていますが、受け取る側は何をどうすればいいのか分かりません。特に経験の浅い選手ほど、抽象的な言葉を具体的な行動に変換する力がまだ育っていません。
2. 相手の理解度・経験値を無視している
同じ「周りを見て動け」という指示でも、経験3年目の選手と始めたばかりの選手とでは、そもそも「周りを見る」ために必要な判断材料の量が違います。相手が今どこまで理解できる状態なのかを考えずに指示を出すと、伝わるはずがありません。
3. 一方通行で、確認のプロセスがない
指示を出して終わり、というケースが一番多い失敗です。相手が本当に理解したかどうかを確認しないまま次に進んでしまうと、誤解に気づくのは試合や本番の最中になってしまいます。
年代・レベルによって「伝わり方」がここまで違う
同じ「伝える」でも、対象によってアプローチはまったく変わります。これは実際に小学生・大学生・社会人女子チームを指導して感じた違いです。
小学生:短く・具体的に・すぐ試させる
小学生には、理由や背景を長く説明するよりも、「今すぐできる具体的な行動」を短い言葉で伝える方が効果的です。伝えたらすぐにプレーの中で試させ、できたその場でフィードバックする。理屈より体験が先に来る年代です。
大学生:理由や意図まで伝えると自発的に動く
大学生になると、「なぜそれをやるのか」という理由まで伝えることで、指示された通りに動くだけでなく、自分で考えて応用できるようになります。理由を省略すると、表面的な形だけをなぞる動きになりがちです。
社会人女子チーム:背景説明+本人の意見を聞く姿勢が効く
社会人になると、それぞれが仕事や生活の中で培った考え方を持っています。一方的に指示するのではなく、背景を説明したうえで「あなたはどう思う?」と本人の意見を聞く姿勢を見せることで、納得感を持って動いてもらえます。
全年代に共通して効く、伝わる指示の3つのコツ
年代によってアプローチは変わりますが、根底にある考え方は共通しています。
1. 具体的な行動レベルまで落とし込む
「もっと頑張れ」ではなく「次のプレーでは、パスを受ける前に一度後ろを振り返ろう」まで具体化する。相手が「何をすればいいか」を迷わない状態まで落とし込むのがポイントです。
2. 「なぜそれをやるのか」をセットで伝える
行動だけを伝えると、その場限りの対応になってしまいます。理由をセットで伝えることで、似たような場面に自分で応用できるようになります。
3. 伝えたあとに「本人の言葉で」言い直させて確認する
指示を出したあと、「今の、自分の言葉で言うとどういうこと?」と聞いてみる。これだけで、伝わっていなかった部分がその場で分かります。確認のひと手間が、あとの手戻りを大きく減らしてくれます。
実践例:同じ指示を年代別にどう言い換えるか
「もっと周りを見て動こう」という一つの指示を、年代別に言い換えるとこうなります。
- 小学生向け:「パスを受ける前に、右と左を1回ずつ見てみよう」
- 大学生向け:「相手がプレスに来るタイミングで視野が狭くなりやすいから、受ける前に首を振る習慣をつけよう。そうすると次のプレーの選択肢が増えるよ」
- 社会人向け:「周りを見る余裕がなくなっているように見えるけど、どのタイミングで一番余裕がなくなる?一緒に対策を考えよう」
同じ課題でも、伝え方次第でここまで変わります。
まとめ
26年間、様々な年代を指導してきて分かったのは、「伝わる指示」に特別なテクニックは必要ないということです。大事なのは次の3つです。
- 抽象的な言葉を、具体的な行動レベルまで落とし込む
- 「なぜ」をセットで伝える
- 伝えたら、相手の言葉で言い直させて確認する
指示は「出した」時点では完結しません。相手に「伝わった」時点で、はじめて指示は意味を持ちます。この視点は、スポーツ指導だけでなく、職場での後輩育成やチームマネジメントにもそのまま活かせるはずです。
ここでは小学生~大学生~社会人とスキルレベルが上がっていくという前提で話をしていますが、実際には社会人で初心者もいれば、小学生で高いレベルの子もいます。
社会人の初心者であれば小学生と同じレベルの話の内容をしますが、説明は大人向けにすると上手くいきやすいです。
小学生でレベル高い子には社会人と同じような内容を話ますが、説明が子供が分かりやすいようにかみ砕いて、かつ長すぎないようにしてあげます。
同じ社会人と言っても理解が早い人と遅い人、自分で調べる人、教えてもらわないと何もできない人と様々いると思います。
その人に合った指示の仕方ができるように頑張りましょう。

